弁護士法人M&A総合法律事務所
HOME / 判例 / 株式併合による少数株主の締め出しと株主総会決議の効力―札幌高等裁判所令和3年11月26日判決

株式併合による少数株主の締め出しと株主総会決議の効力―札幌高等裁判所令和3年11月26日判決

公開 2021年11月26日

▶ 少数株主の排除・スクイーズアウトに関する御相談

非上場の同族会社が、長年対立してきた親族側の株主を株式併合によって株主から外し、締め出された少数株主が株主総会決議の無効確認と取消しを求めた事件の判例です。札幌地方裁判所令和3年6月11日判決は、少数株主の請求をいずれも棄却し、札幌高等裁判所令和3年11月26日判決も、第一審の判断を維持して控訴を棄却しました。

両判決は、少数株主の締め出しを目的とする株式併合であっても直ちに会社法の趣旨に反するものではないとしたうえで、会社経営の転換期にあった会社が、対立してきた株主を排除して安定株主による支配権を確立しようとしたことは、正当な事業目的ではないとまではいえないと判断しました。本記事では、株式併合によるスクイーズアウトを計画する会社・支配株主の立場から、両判決が決議の効力をどのような枠組みで判断したのか、事前開示書面や端数処理の手続、交付される金員の額がどのように扱われたのかを整理します。

Contents
  1. 裁判例の基本情報
  2. 当事者の表記
  3. 事案の概要
    1. ビル賃貸業を営む非上場の同族会社と、親族間の株式をめぐる対立
    2. 1,569株を1株とする株式併合の決議
    3. 決議後の通知、端数の売却許可、買取りと供託
  4. 事案の経緯
  5. 株式併合の決議内容と事前開示書面の記載
    1. 決議内容
    2. 事前開示書面に記載された株式併合の理由
  6. 当事者の請求と主要な主張
    1. 少数株主の請求
    2. 決議の無効事由をめぐる主張
    3. 決議の取消事由をめぐる主張
    4. 控訴審で少数株主が付加した主張
  7. 結論を左右した争点
  8. 第一審の判断
    1. 事前開示手続の主張―決議の内容の違法ではなく、前提も欠く
    2. 端数処理の主張―併合後の手続の違法にすぎず、手続も適法に行われていた
    3. 株主平等原則の主張―締め出し目的でも直ちに会社法の趣旨に反しない
    4. 特別利害関係人―該当する余地は認めつつ、判断を「著しく不当」の要件で決した
    5. 株式併合の目的―会社経営の転換期と、繰り返されてきた紛争
    6. 交付予定額―価格は決議とは別の手続で定まる
  9. 控訴審の判断
    1. 第一審の判断を維持し、その理由を引用した
    2. 補正の箇所
    3. 株主平等原則について付加した判断―目的の不当性は取消事由の問題
    4. 取消事由について付加した判断―株主構成を整える必要性と、少数株主の不利益の程度
  10. 審級ごとの結論の推移
  11. 主文及び結論
  12. 判断の射程
    1. 参考となる点
    2. 一般化できない点
    3. 株式併合を計画する会社・支配株主が確認しておきたいこと
  13. よくあるご質問
    1. 特定の少数株主を締め出すことを目的とする株式併合は、それだけで違法になりますか。
    2. 対立している株主を排除することは、正当な事業目的といえますか。
    3. 少数株主に交付する金額が低いと主張された場合、株式併合の決議が取り消されますか。
    4. 事前開示書面の閲覧を拒んだと主張された場合、決議は無効になりますか。
  14. 関連する記事と御相談のご案内

裁判例の基本情報

審級 裁判所 裁判日 事件番号 裁判の形式 結論
第一審 札幌地方裁判所民事第5部 令和3年6月11日 令和2年(ワ)第876号 判決 少数株主(原告)の主位的請求(決議無効確認)及び予備的請求(決議取消し)をいずれも棄却。訴訟費用は原告の負担
控訴審 札幌高等裁判所第2民事部 令和3年11月26日 令和3年(ネ)第293号 判決 控訴棄却。控訴費用は控訴人(少数株主)の負担

上訴の状況は次のとおりです。第一審判決に対しては、少数株主が控訴したことが控訴審判決の本文から確認できます。控訴審判決に対する上告又は上告受理申立ての有無及び判決の確定は、確認できていません。この表は、各判決本文の冒頭及び末尾の記載に基づいて当事務所が作成したものです。

当事者の表記

判決に出てくる会社名・氏名は、本記事独自のイニシャルに置き換えています。判決が用いた符号も、そのままでは使わず、次の表記に置き換えています。判決本文を引用する部分でも同じ表記に置き換え、置き換えた箇所を〔 〕で示しています。なお、控訴審判決は、第一審判決と異なる符号で同じ人物を表示している箇所がありますが、本記事では、審級を通じて同じ人物に同じ表記を用いています。

本記事の表記 立場
ビル賃貸会社HKB 被告・被控訴人。所有する2棟のビルをテナントに賃貸する事業を営む非上場の株式会社で、株式の譲渡に取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあります
代表取締役MRT氏 ビル賃貸会社HKBの代表取締役。創業者の二女HRK氏の夫です
少数株主NKS氏 原告・控訴人。発行済株式4万株のうち1,500株を有していた株主で、代表取締役MRT氏の義理の甥です
創業者TKO氏 ビル賃貸会社HKBの創業者
創業者の妻YSE氏 創業者TKO氏の妻
長女KYM氏 創業者夫妻の長女で、少数株主NKS氏の母です
二女HRK氏 創業者夫妻の二女で、代表取締役MRT氏の妻です
三女AYN氏 創業者夫妻の三女です
長女の夫GNJ氏 長女KYM氏の夫。長女KYM氏が株式の譲渡承認を請求した際の譲渡の相手方です

事案の概要

ビル賃貸業を営む非上場の同族会社と、親族間の株式をめぐる対立

ビル賃貸会社HKBは、昭和47年と昭和55年に新築された2棟のビルを所有し、テナントに賃貸するビル賃貸業を営む非上場会社です。定款には、株式の譲渡に取締役会の承認を要する旨の定めがありました。令和2年3月6日当時の発行済株式の総数は4万株で、少数株主NKS氏はそのうち1,500株を有していました。

ビル賃貸会社HKBの創業者は創業者TKO氏で、その妻が創業者の妻YSE氏、長女が長女KYM氏、二女が二女HRK氏、三女が三女AYN氏です。少数株主NKS氏は長女KYM氏の子であり、代表取締役MRT氏は二女HRK氏の夫です。

判決が認定した事実によれば、長女KYM氏・少数株主NKS氏の側と、代表取締役MRT氏・二女HRK氏の側との間では、ビル賃貸会社HKBの株式の相続や株主権の行使をめぐる争いが度々生じていました(日付は次節の表のとおりです)。

  • 創業者の妻YSE氏と創業者TKO氏は、いずれも、保有する株式の2分の1を二女HRK氏に相続させ、2分の1を代表取締役MRT氏に遺贈する旨の公正証書遺言をしていました。長女KYM氏はこれらに納得せず、創業者の妻YSE氏の死後には創業者TKO氏、二女HRK氏及び三女AYN氏が遺産分割調停を申し立て、創業者TKO氏の死後には長女KYM氏が遺留分減殺請求訴訟を提起しました。
  • 長女KYM氏は、会社に対し、過去10年分の株主名簿や会計帳簿等など種々の書類の開示を求め、長女KYM氏及び少数株主NKS氏は、株式の売渡しを請求する旨の通知や株価の説明・算出資料の提出要求をしました(後に撤回)。その過程で、長女KYM氏は代表取締役MRT氏・二女HRK氏夫妻を書面で非難しました。
  • 長女KYM氏は、長女の夫GNJ氏への株式の譲渡承認を請求し、会社が承認しないと、株式を1株9万円で買い取るよう求めて株式の売買価格の決定を申し立てました。札幌地方裁判所は、売買価格を1株2万849円と定める決定をしました。この間、長女KYM氏及び少数株主NKS氏は、会計帳簿類の閲覧請求をするなどしていました。

1,569株を1株とする株式併合の決議

ビル賃貸会社HKBは、令和2年2月20日付けで「株式の併合に関する事前開示事項」と題する書面を作成し、同月27日、株主らに対し、同年3月6日に臨時株主総会を開催する旨の招集通知を発出しました。招集通知では、株式1,569株を1株に併合する議案が示されていました。

令和2年3月6日の臨時株主総会には、少数株主NKS氏以外の株主全員が出席し(委任状による出席を含みます)、議長である代表取締役MRT氏が株式併合を必要とする理由を説明した後、出席株主全員の賛成により議案が承認可決されました。少数株主NKS氏は、臨時株主総会に先立って株式併合に反対する旨の通知をしておらず、臨時株主総会にも出席しませんでした。

少数株主NKS氏の保有株式は1,500株であり、併合の割合である1,569株に満たないため、併合後は1株未満の端数のみとなり、株主としての地位を失うことになります。判決は、この結果、少数株主NKS氏は株主としての地位を失い、それ以外の株主は会社に対する支配権を強化することになると述べています。

決議後の通知、端数の売却許可、買取りと供託

ビル賃貸会社HKBは、決議当日の令和2年3月6日、株主らに対し、会社法181条1項に基づいて、併合の割合、効力発生日及び効力発生日における発行可能株式総数を通知しました。少数株主NKS氏は、同月9日、会社の本店を訪れ、資料等の閲覧を請求しました。

少数株主NKS氏は、令和2年4月14日に本件の訴えを提起しました。一方、ビル賃貸会社HKBは、同月20日、札幌地方裁判所に対し、株式併合により生じる1株未満の端数の売却許可を申し立てました(会社法235条2項が準用する234条2項)。札幌地方裁判所は、同年6月10日、端数の合計1株に相当する株式を1株2,832万8,874円で任意売却することを許可する決定をしました。

これを受けて、ビル賃貸会社HKBは、会社法234条4項(235条2項による準用)により株式を買い取ることとし、少数株主NKS氏に対し、許可決定に基づいて算出した2,686万500円を受領するよう催告しましたが、受領を拒絶されたため、同額を供託しました。

事案の経緯

時期 出来事(判決本文の前提事実及び認定事実による)
平成18年7月 創業者の妻YSE氏が死去。株式の帰属をめぐり遺産分割調停へ
平成20年3月から7月 長女KYM氏が、会社に対し、株主名簿、定款、株主総会議事録、会計帳簿等の開示を求める
平成20年11月17日 長女KYM氏及び少数株主NKS氏が、株式の売渡しを請求する旨を通知(同年12月29日に撤回)
平成21年1月29日 長女KYM氏が、長女の夫GNJ氏への株式の譲渡承認を請求。会社は承認せず
平成21年4月1日 長女KYM氏が、札幌地方裁判所に株式の売買価格の決定を申立て
平成21年10月 創業者TKO氏が死去
平成23年3月22日 札幌地方裁判所が、売買価格を1株2万849円と定める決定
平成26年1月7日 長女KYM氏が、遺留分減殺請求訴訟を提起
令和2年2月20日付け 会社が「株式の併合に関する事前開示事項」と題する書面を作成
令和2年2月27日 臨時株主総会の招集通知を発出(1,569株を1株に併合する議案)
令和2年3月6日 臨時株主総会で、少数株主NKS氏以外の株主全員の賛成により株式併合を決議。同日、会社法181条1項の通知
令和2年3月9日 少数株主NKS氏が会社の本店を訪れ、資料等の閲覧を請求
令和2年3月30日 株式併合の効力発生日(決議内容による)
令和2年4月14日 少数株主NKS氏が本件の訴えを提起
令和2年4月20日 会社が、札幌地方裁判所に1株未満の端数の売却許可を申立て
令和2年6月10日 札幌地方裁判所が、1株2,832万8,874円での任意売却を許可する決定。その後、会社が買取りを決め、2,686万500円の受領を催告し、拒絶されたため供託
令和3年6月11日 札幌地方裁判所が、少数株主NKS氏の請求をいずれも棄却する判決
令和3年11月26日 札幌高等裁判所が、控訴を棄却する判決

株式併合の決議内容と事前開示書面の記載

以下は、判決本文に記載された決議内容及び事前開示書面の記載を、判決本文の文言のまま引用したものです。数字の表記も判決本文のとおりとし、会社の表記は本記事の表記に置き換えています。

決議内容

1 併合の割合
〔ビル賃貸会社HKB〕の株式につき1569株を1株に併合する。
2 効力発生日
令和2年3月30日
3 効力発生日における発行可能株式総数
4万0000株

この決議は、会社法180条2項及び309条2項4号による株主総会の特別決議として行われました。

事前開示書面に記載された株式併合の理由

当社は、非上場会社であり、経済情勢が悪化していくことが予測されるなか、意思決定の迅速性を確保することが、今後変化する経営環境にスピーディーに対応していくうえで必要と考えております。このようななか、意思決定の迅速性を確保するために、一定の株式数を保有する株主の方に株主を限定し、株式の管理を簡易にすることを目的として、本株式併合を実施することといたしたいと存じます。

第一審判決は、この書面には、併合の割合、株式の併合の効力発生日、効力発生日における発行可能株式総数、併合の割合についての相当性に関する事項等が記載されていたと認定しています。

当事者の請求と主要な主張

少数株主の請求

少数株主NKS氏は、ビル賃貸会社HKBに対し、主位的に、決議の内容が法令に違反するとして、会社法830条2項に基づき決議の無効確認を求めました。予備的に、特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとして、同法831条1項3号に基づき決議の取消しを求めました。

決議の無効事由をめぐる主張

論点 少数株主NKS氏の主張 ビル賃貸会社HKBの反論
事前開示手続 決議後の令和2年3月9日に併合の割合の相当性について質問し、資料の提出を求めたが、会社は具体的な説明をせず、資料の公表もしないと回答した。会社はそもそも事前開示書面を備え置いておらず(会社法182条の2第1項違反)、閲覧請求も拒否した(同条2項違反) 法令の定める事項を記載した事前開示書面を作成し、本店に備え置いていた。少数株主から事前開示書面の閲覧を求められたことはなく、求められたのは最新の定款等であった。1,569株を1株に併合した計算根拠を示す特段の資料はなく、開示すべき書面でもない
端数処理 会社は1株未満の端数の処理を行っておらず、株主に金銭を交付する手続を何ら採っていない(会社法235条1項・2項、234条2項から5項違反) 併合の効力発生後に、札幌地方裁判所に端数の売却許可を申し立て、許可決定を受けるなどして、法令の規定に従った端数処理を行っている
株主平等原則 株主が6名しかいない非公開会社で、少数株主NKS氏だけが株主としての地位を奪われており、目的はその排除に尽きる。多数決の濫用であり、株主平等原則(会社法109条1項)に違反する 決議は全株式を一律に一定の割合で併合するもので、影響は全株主に平等に及ぶ。少数株主の排除のためにされたものであっても、直ちに株主平等原則に反するものではない

決議の取消事由をめぐる主張

論点 少数株主NKS氏の主張 ビル賃貸会社HKBの反論
特別利害関係人 少数株主NKS氏だけが会社から締め出され、しかも低廉な金員の交付しか受けられない一方、それ以外の株主は株主としての地位を保持し、会社に対する支配力を高めることができる。それ以外の株主は特別利害関係人に当たる 最高裁判所昭和42年3月14日判決(控訴審で「第三小法廷」の判決と補正されています)を引いて、特別利害関係人とは、特定の株主がその株主の地位を離れて純粋に個人的な利害関係を有する場合を指す。株式併合は全株式を一律に併合するもので、株主全員が等しく影響を受け、そのような株主はいない
目的の不当性 会社は事業との関係で株式併合の必要性・相当性を合理的に検討しておらず、代表取締役MRT氏が少数株主NKS氏とその母を嫌う個人的な感情により、恣意的に締め出しを図った。正当な事業目的がない 所有するビルの老朽化、周辺の再開発計画の進行、代表取締役の高齢化など、会社経営の転換期を迎え、意思決定を円滑かつ迅速に進めることが急務であった。少数株主NKS氏とその母は会社や経営陣と紛争を繰り返しており、今後も円滑な意思決定を妨げるおそれがあった。そこで、会社と敵対的な関係にある少数株主NKS氏を株主から排除し、安定株主による会社支配権を確立することを目的として株式併合を行った
交付される金員の額 交付予定の2,686万500円は、併合前の1株当たりに換算すると1万7,907円にすぎず、著しく低廉である 1株未満の端数の取扱いは、併合の効力発生後に会社法235条、234条に基づいて別途決定されるもので、現に裁判所の許可決定を受けている。金額の多寡を理由に決議の不当性を主張するのは失当である

控訴審で少数株主が付加した主張

少数株主NKS氏は、控訴審で次の主張を付け加えました。

  • 株主平等原則について。株式の内容及び数に応じて平等に取り扱えば株主平等原則に違反しないという考え方は、株主の地位を奪うことなく株主全員の株式数を減らすにとどまる場合や、株式の管理費用を下げる目的で株式併合が行われる場合に妥当するにすぎない。本件は少数株主NKS氏だけが株主の地位を失い、目的も代表者の主観的な理由によるもので、多数決の濫用である。
  • 取消事由について。少数株主NKS氏は、創業者夫妻の相続には関与しておらず、代表取締役MRT氏夫妻との間に紛争も生じていない。母が行った株式の売渡し請求や会計帳簿等の閲覧請求は、当時中学生であった少数株主NKS氏の法定代理人として母が行ったもので、本人の意向は反映していない。会社の経営に敵対的な行動をとったことも、株主総会に出席したこともなく、発行済株式総数の3.75パーセントを保有するにすぎないから、経営を阻害するおそれはない。本件株式併合は代表者の根拠のない漠然とした不安から少数株主NKS氏を排除しようとするものである。

結論を左右した争点

両判決が整理した争点は、決議の無効事由の有無と、決議の取消事由の有無の2つです。結論を左右したのは、次の3点でした。

  1. 事前開示書面の備置き、閲覧請求への対応、端数処理といった手続の違法の主張が、そもそも「決議の内容」の法令違反(会社法830条2項)に当たるか。
  2. 特定の少数株主を締め出す目的で行われた株式併合が、株主平等原則に反し、又は「著しく不当な決議」(会社法831条1項3号)に当たるか。特に、会社側が主張した目的が正当な事業目的といえるか。
  3. 少数株主に交付される金員の額が低いことが、決議を「著しく不当な決議」とする理由になるか。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

第一審の判断

札幌地方裁判所は、無効事由として主張された3点のいずれも採用せず、取消事由についても「著しく不当な決議」とはいえないとして、少数株主NKS氏の請求をいずれも棄却しました。

事前開示手続の主張―決議の内容の違法ではなく、前提も欠く

第一審判決は、まず、事前開示書面の備置きや閲覧請求に関する主張について、次のように述べました。

「そもそもこれらは事前開示書面の備置きや閲覧請求に係る違法にすぎないのであって、本件決議の内容自体の法令違反(同法830条2項)をいうものではない。」

閲覧請求の拒否の主張については、決議より後の出来事であり、仮に違法があっても決議の内容が遡って法令に違反することにはならないとして、主張自体が失当ではないかと述べています。

そのうえで、念のための検討として、少数株主NKS氏が令和2年3月9日付けで作成した閲覧申請書には、閲覧を求める資料として「最新の定款」、最新の株主名簿(株式所有数の内訳を含みます)、「臨時株主総会の議事録」しか記載されていないことを認定し、求められた資料は事前開示書面ではなかったとしました。1,569株を1株とした計算根拠を質問したのに説明がなかったとの主張についても、仮にそのようなやり取りがあったとしても単に質問したにすぎず、法の定める事前開示書面の閲覧を請求したものではないとしています。

さらに、会社が決議に先立ち、令和2年2月20日付けの「株式の併合に関する事前開示事項」と題する書面を本店に備え置いていたこと、その書面に併合の割合、効力発生日、効力発生日における発行可能株式総数、併合の割合についての相当性に関する事項等が記載されていたことを認定し、適法な事前開示書面であったと判断しました。

端数処理の主張―併合後の手続の違法にすぎず、手続も適法に行われていた

端数処理についても、第一審判決は、株式の併合後の端数処理に係る違法にすぎず、決議の内容自体の法令違反をいうものではないとしました。そして、決議が適法にされて併合の効力が発生した以上、その後に会社が端数処理を怠ったとしても、決議の内容が遡って法令に違反していたことになるわけではないと述べています。

この点を措くとしても、会社は決議後に札幌地方裁判所に端数の売却許可を申し立て、許可決定を受け、会社法234条4項(235条2項による準用)により株式を買い取ることとして、少数株主NKS氏に金員の受領を催告しているから、会社法の定める端数処理を適法に行っていたと判断しました。

株主平等原則の主張―締め出し目的でも直ちに会社法の趣旨に反しない

第一審判決は、会社法が株式併合について、併合を必要とする理由を株主総会で説明しなければならないと定めるだけで(会社法180条4項)、併合の理由の内容や当否には条文上何らの制限も設けていないことを指摘し、次のように述べました。

「株式の併合により、少数株主の持ち株数が1株に満たなくなり、株主としての地位を失うという結果が生じること自体は、会社法が予定しているものというべきであって、株式の併合が少数株主の締め出しを目的としているからといって、直ちに同法の趣旨に反するということはできない。」

その裏付けとして、平成26年法律第90号による会社法の改正で、事前開示手続(182条の2)、事後開示手続(182条の6)、株主による差止請求の制度(182条の3)及び反対株主による株式買取請求の制度(182条の4)が設けられたことを挙げ、これらの整備は、締め出し目的の株式併合が直ちに会社法の趣旨に反するわけではないことを前提に、締め出される少数株主の保護を図り、その衡平性を担保しようとしたものとも解されるとしました。

そして、株主平等原則は株主を「その有する株式の内容及び数に応じて」平等に取り扱うことを求めるものであるとして、次のように判断しました。

「本件決議による本件株式併合は、全株式について一律に一定の割合で併合の対象とするというものであり、その効果は全株主に生じるものであって、まさに「その有する株式の内容及び数に応じて」平等に取り扱うものにほかならない。」

少数株主NKS氏が、自身の排除を目的としていることのほかに事情を主張していないことも指摘し、株主平等原則違反の主張を退けました。こうして、無効事由はないとして、主位的請求を棄却しています。

特別利害関係人―該当する余地は認めつつ、判断を「著しく不当」の要件で決した

取消事由について、第一審判決は、特別利害関係人の該当性については次のように述べるにとどめました。

「本件決議による本件株式併合の結果、〔少数株主NKS氏〕は株主としての地位を失い、これにより〔少数株主NKS氏〕以外の株主は会社に対する支配権を強化することになるのであるから、〔少数株主NKS氏〕以外の株主が本件決議についての特別利害関係人に該当するとみる余地もないわけではない。」

そのうえで、「著しく不当な決議」がされたものとはいえないとして、その理由を、株式併合の目的と、交付予定額の2つの観点から示しました。特別利害関係人に当たるかどうかについて、判決は結論を示していません。

株式併合の目的―会社経営の転換期と、繰り返されてきた紛争

第一審判決は、会社側が主張した目的を、客観的な事情と照らし合わせて検討しました。認定された事情は次のとおりです。

  • 会社は所有するビル2棟でビル賃貸業を営んでおり、ビルはいずれも建築から長期間が経過し、老朽化のため大規模な改築又は建替えを要する時期にあったこと
  • ビルが位置する駅の周辺で、再開発計画が進行していること(判決は公知の事実としています)
  • 代表取締役MRT氏は、決議の時点で70歳になろうとしていたこと
  • 長女KYM氏と代表取締役MRT氏・二女HRK氏との間では、株式の相続や株主権の行使をめぐって争いが度々生じており、少数株主NKS氏も株式の売渡しや会計帳簿等の閲覧を長女KYM氏とともに請求していたこと

少数株主NKS氏は、売渡請求の当時は15歳であり、母である長女KYM氏が法定代理人として行ったと主張しましたが、判決は、少数株主NKS氏が売渡請求の通知書の成立自体は否認していないことを指摘しています。そして、少数株主NKS氏が将来、会社の円滑な意思決定を妨げ、安定的な会社経営を阻害するのではないかと考えたという代表取締役MRT氏の供述も、不自然、不合理とまではいえないとしました。結論として、次のように判断しています。

「本件株式併合は、会社経営の転換期を迎えた〔ビル賃貸会社HKB〕において、その意思決定を円滑かつ迅速に進めるため、〔少数株主NKS氏〕を株主から排除し、安定株主による会社支配権を確立することを目的として行われたものと認めるのが相当であって、これ自体、正当な事業目的ではないとまではいえない。」

こうして、株式併合が正当な事業目的を欠き、代表取締役MRT氏の個人的な感情に基づいて行われたということはできないとして、この点の主張を退けました。

交付予定額―価格は決議とは別の手続で定まる

交付される金員が低廉であるとの主張について、第一審判決は、株式の併合の株主総会決議では、全部取得条項付種類株式の取得の株主総会決議(会社法171条1項)と異なり、端数の売却額や、買取りと引換えに交付される金員の額は決議事項とされていないことを指摘しました。

そして、株式の併合の場合には、端数は市場価格のない株式であれば裁判所の許可を得て売却でき、会社が買い取るときは交付される金員の総額を取締役会の決議で定め、反対株主は株式買取請求権を行使して価格の協議や裁判所への価格決定の申立てができるとして、株主総会決議とは別の手続で株式の価格を定めるものとされていると述べました。

本件でも、決議の際に交付される金員の額まで決議した事実はなく、決議の後に札幌地方裁判所が売却額を定めて売却を許可し、それを踏まえて交付される金員の額が定められたとして、判決は次のように述べています。

「後に定められた金員の額の多寡によって本件決議が遡及的に「著しく不当な決議」となるというわけでもない。」

そのうえで、少数株主NKS氏の主張は、実質的には札幌地方裁判所の売却許可決定に対する不服をいうものにすぎないとして、採用しませんでした。こうして、取消事由もないとして、予備的請求も棄却しています。

控訴審の判断

第一審の判断を維持し、その理由を引用した

札幌高等裁判所は、「当裁判所も、控訴人の請求をいずれも棄却すべきと判断する。」と述べ(「控訴人」は少数株主NKS氏を指します)、字句の補正を加えたうえで、第一審判決の「当裁判所の判断」の理由を引用しました。前提事実、争点及び当事者の主張についても、補正を加えたうえで第一審判決を引用しています。控訴審は、第一審の判断を維持しており、判断の内容を変更した点はありません。

補正の箇所

控訴審判決が示した補正は、次のとおりです。当事務所の見るところ、いずれも字句の補正であり、第一審の判断の内容に影響するものではありません。

補正の対象 補正の内容
事案の概要の部分 ある箇所の「株式」を「株主」に改める
事案の概要の部分(会社の主張) 会社が引用した最高裁判所昭和42年3月14日判決の表示に「第三小法廷」を加える
認定事実(長女KYM氏の開示請求) 「7月にかけて、」の後に「被控訴人に対し、」を加える(書類の開示を求めた相手が会社であることを明示)
事前開示書面についての判断 2か所の「据え置いて」を「備え置いて」に改める
端数処理についての判断 「同地裁」を「同裁判所」に改める
交付予定額についての判断 「数については、」の後に「競売に代えて、」を加える(端数の売却が競売に代わる方法であることを明示)

控訴審判決は補正の箇所を第一審判決の頁と行で示しています。上の表の「補正の対象」は、補正後の文言から当事務所が該当箇所を特定したものです。

株主平等原則について付加した判断―目的の不当性は取消事由の問題

控訴審は、少数株主NKS氏だけが株主の地位を失うことは、株主平等原則に違反しないとの第一審の判断を左右しないとしました。そのうえで、目的の不当性の位置付けについて、次のように述べました。

「株式併合の目的が不当なものであることは、株主総会決議の取消事由(会社法831条1項3号)になり得るとはいえるものの、株主平等原則違反を根拠付ける事由にはならないというべきである。」

これは、第一審判決が示した枠組みを補充して、締め出しの目的の当否は、決議の無効事由としての株主平等原則違反ではなく、取消事由である「著しく不当な決議」の該当性の中で検討されるべきことを明らかにしたものです。

取消事由について付加した判断―株主構成を整える必要性と、少数株主の不利益の程度

控訴審は、第一審判決のうち、会社が決議の時点で会社経営の転換期を迎えていたとする部分を引用したうえで、次のように述べました。

「このような被控訴人の当時の経営状況からすれば、意思決定を円滑かつ迅速に行えるよう株主構成等の環境を整えておくことは、特に重要なことであったといえる。」

(引用中の「被控訴人」はビル賃貸会社HKBを指します。)

次に、少数株主NKS氏が紛争に関与していないと主張した点については、少数株主NKS氏が長女KYM氏と代表取締役MRT氏との間の紛争に積極的に関与していたとまではいえないと認めつつ、長女KYM氏が少数株主NKS氏と連名の書面を作成し、会社に対して様々な要求をしていたことを指摘し、次のように判断しました。

「その態様等に照らすと、〔長女KYM氏〕と〔少数株主NKS氏〕は一体となって行動していたものとみられる。」

そして、その後に両者の関係が変化したことをうかがわせる事情は見当たらないから、代表取締役MRT氏が会社の代表者として、少数株主NKS氏が会社の経営を阻害する行動に及ぶおそれを懸念し、それを解消する方法として株式併合を選択したことが不当であるとはいえないとしました。

さらに、控訴審は、少数株主NKS氏の側の不利益にも目を向けています。少数株主NKS氏は株主の地位を失うことになるものの、これまで会社の経営に関して特段の関心を示しておらず、経営に関与したこともないこと(少数株主NKS氏自身もそのように主張していたこと)を指摘し、次のように述べました。

「本件株式併合に伴って〔少数株主NKS氏〕が受ける不利益の程度は小さいといえ、この点からみても本件株式併合が不当であるとはいえない。」

こうして、控訴審は、少数株主NKS氏が指摘する事情はいずれもこの判断を左右しないとして、控訴を棄却しました。第一審は主に会社側の目的が正当な事業目的といえるかを検討しましたが、控訴審は、これに加えて、株主構成を整える必要性と、締め出される少数株主の不利益の程度という観点からも、決議が不当でないことを補強したといえます。

審級ごとの結論の推移

論点 第一審(札幌地方裁判所令和3年6月11日判決) 控訴審(札幌高等裁判所令和3年11月26日判決)
事前開示手続 決議の内容の違法ではない。閲覧を求められたのは事前開示書面ではなく、適法な事前開示書面が備え置かれていた 維持(字句の補正のみ)
端数処理 決議の内容の違法ではない。売却許可、買取り、受領の催告により適法に行われていた 維持(字句の補正のみ)
株主平等原則 一律の割合による併合で違反しない。締め出し目的でも直ちに会社法の趣旨に反しない 維持。目的の不当性は取消事由の問題で、株主平等原則違反の根拠にはならないと付加
特別利害関係人 該当するとみる余地もないわけではないとし、結論は示さず 維持(独自の判断は示さず)
目的の正当性 会社経営の転換期における意思決定の円滑化と安定株主による支配権の確立は、正当な事業目的ではないとまではいえない 維持。株主構成を整える重要性、母との一体的な行動、少数株主の不利益の程度が小さいことを付加
交付予定額 金員の額は決議事項ではなく別の手続で定まる。額の多寡で決議が遡って著しく不当になることはない 維持(字句の補正のみ)
結論 主位的請求・予備的請求ともに棄却 控訴棄却

主文及び結論

第一審判決の主文は、「原告の請求をいずれも棄却する。」「訴訟費用は原告の負担とする。」というものです。控訴審判決の主文は、「本件控訴を棄却する。」「控訴費用は控訴人の負担とする。」というものです(「原告」「控訴人」はいずれも少数株主NKS氏を指します)。少数株主NKS氏が求めた株式併合決議の無効確認と取消しは、いずれの審級でも認められませんでした。

判断の射程

以下は、両判決の内容を踏まえた当事務所の評価です。判決が述べた事項と区別してお読みください。最終的な判断である控訴審判決を基準とし、控訴審が付加した点はその旨を示しています。

参考となる点

  • 締め出し目的の株式併合そのものは、直ちに違法とはされなかったこと。両判決は、少数株主が株主としての地位を失う結果は会社法が予定しているもので、締め出しを目的とすることだけで会社法の趣旨に反するとはいえないとしました。非上場会社が株式併合によってスクイーズアウトを行うこと自体を否定しなかった判断として、会社・支配株主の側にとって参考になります。
  • 目的の当否は「著しく不当な決議」の該当性で検討されること。控訴審は、目的の不当性は株主総会決議の取消事由になり得るとしつつ、株主平等原則違反の根拠にはならないと述べました。会社の側からみれば、一律の割合による併合である限り株主平等原則違反による無効の主張は通りにくい一方で、目的が不当であれば取消しの対象となり得ることを意味します。株式併合を計画する際には、目的の正当性を説明できるように準備しておくことが重要になります。
  • 会社側の目的は、客観的な事情と照らし合わせて検討されたこと。第一審判決は、ビルの老朽化、再開発計画の進行、代表者の年齢という事情を証拠等により確認して、会社経営の転換期にあったと認めました。少数株主側との紛争についても、遺言をめぐる紛争、売渡請求、価格決定、遺留分減殺請求訴訟、連名の書面による要求といった具体的な経過が認定されたうえで、代表者の懸念が「不自然、不合理とまではいえない」とされています。会社としては、株式併合を必要とする事情を客観的な資料で説明できるようにしておくことが大切です。
  • 締め出される少数株主の不利益の程度も考慮されたこと(控訴審で付加)。控訴審は、少数株主が会社の経営に特段の関心を示さず、関与したこともないことから、不利益の程度は小さいとしました。決議の不当性は、会社側の必要性だけでなく、少数株主の側の事情との兼ね合いで判断され得ることを示しています。
  • 交付される金員の額は、決議の効力ではなく別の手続の問題とされたこと。両判決は、株式の併合では端数の売却額や交付される金員の額は決議事項ではなく、裁判所の売却許可や反対株主の株式買取請求・価格決定の手続で定まるとしました。価格に不満がある少数株主は、決議の取消しではなく、これらの手続で争うことが予定されているという整理です。会社としては、端数の売却許可の申立て、買取り、受領の催告、受領拒絶の場合の供託までを、法令に沿って進めることが重要です。
  • 事前開示書面の備置きが確認されたこと。第一審判決は、手続の違法は決議の内容の違法ではないとしつつ、念のための検討でも、招集通知より前の日付で作成され本店に備え置かれていた事前開示書面の存在と記載事項を確認して主張を退けています。法定の手続を確実に履行しておくことが、紛争になった場合の防御の基礎になります。

一般化できない点

  • 本件は、株主の数が少ない非上場の同族会社で、親族間の株式をめぐる紛争が長年続き、会社の保有資産であるビルの老朽化や再開発、代表者の高齢化という具体的な事情があった事案です。特定の株主を排除する目的の株式併合が、どのような場合にも「著しく不当な決議」に当たらないとされたわけではありません。
  • 事前開示書面に記載された理由は、意思決定の迅速性の確保と株式の管理の簡易化でしたが、訴訟で会社が主張した目的は、敵対的な関係にある株主の排除と安定株主による支配権の確立でした。両判決は、この両者の関係について特に論じていません。事前開示書面や株主総会での説明と、実際の目的との関係が問題とされる事案では、異なる判断となる余地があります。
  • 第一審判決は、他の株主が特別利害関係人に当たるとみる余地もないわけではないとしながら、その点の結論を示さず、「著しく不当な決議」に当たらないことで請求を退けました。控訴審も独自の判断を示していません。株式併合の決議で、併合後も株主として残る株主が特別利害関係人に当たるかどうかについて、本件から一般的な結論を導くことはできません。
  • 本件の訴えは、決議の内容の法令違反による無効確認(会社法830条2項)と、特別利害関係人の議決権行使による取消し(831条1項3号)を求めるものでした。招集の手続や決議の方法の法令違反による取消し(831条1項1号)は主張されておらず、判決もその観点からの判断はしていません。事前開示手続等の不備が、決議の取消しや株式併合の差止めとの関係でどのように扱われるかは、本件から明らかではありません。
  • 両判決は、交付予定の金員の額が適正であるかどうか自体については判断していません。売却許可の際の1株当たりの価格の当否も、本件の審理の対象ではありません。
  • 少数株主NKS氏は、臨時株主総会に先立って株式併合に反対する旨の通知をせず、総会にも出席しませんでした。判決はこの事実を認定していますが、その法的な意味(反対株主の株式買取請求や差止請求との関係)には触れていません。
  • 控訴審判決に対する上告又は上告受理申立ての有無及び判決の確定は、確認できていません。

株式併合を計画する会社・支配株主が確認しておきたいこと

本件を踏まえると、株式併合によるスクイーズアウトを計画する会社では、まず、株式併合を必要とする会社経営上の事情を、資産の状況、事業の転換、経営の承継などの客観的な事実と結び付けて整理しておくことが考えられます。次に、事前開示書面の作成と備置き、株主総会での理由の説明(会社法180条4項)、効力発生日前の通知(181条1項)、端数の売却許可の申立てと買取り、受領の催告と供託といった法定の手続を、日付と記録が残る形で進めることが重要です。さらに、事前開示書面や株主総会での説明の内容と、実際の目的との間に食い違いが生じないよう、説明の内容を検討しておくことが望まれます。これらは本件を踏まえた当事務所の着眼点であり、両判決が特定の進め方を求めたものではありません。

株式併合などに伴って価格の決定の申立てを受け、会社の側の対応を検討している方は、次のページを御覧ください。

よくあるご質問

特定の少数株主を締め出すことを目的とする株式併合は、それだけで違法になりますか。

本件の両判決は、締め出しを目的とすることだけで直ちに会社法の趣旨に反するとはいえないと判断しました。ただし、控訴審は、目的が不当であれば株主総会決議の取消事由になり得るとしています。目的の正当性を説明できるかどうかが重要になります。

対立している株主を排除することは、正当な事業目的といえますか。

本件では、会社経営の転換期にあった会社が、紛争を繰り返してきた株主を排除して安定株主による支配権を確立しようとしたことについて、正当な事業目的ではないとまではいえないと判断されました。もっとも、会社経営上の具体的な事情と長年の紛争の経過が認定されたことを前提とする判断であり、対立があればどのような場合でも正当とされるわけではありません。

少数株主に交付する金額が低いと主張された場合、株式併合の決議が取り消されますか。

両判決は、株式の併合では交付される金員の額は決議事項ではなく、裁判所の売却許可や反対株主の株式買取請求・価格決定の手続で定まるため、後に定められた金額の多寡によって決議が遡って著しく不当になるわけではないとしました。金額が適正かどうか自体は判断していません。

事前開示書面の閲覧を拒んだと主張された場合、決議は無効になりますか。

第一審判決は、事前開示書面の備置きや閲覧請求に関する違法は、決議の内容の法令違反には当たらないとしたうえで、本件では適法な事前開示書面が本店に備え置かれていたことも確認しています。手続の不備が決議の取消しや差止めの理由とされる場合の扱いは判断されていないため、法定の手続は確実に履行しておくことが重要です。

関連する記事と御相談のご案内

株式併合によるスクイーズアウトを計画する場合は、併合を必要とする会社経営上の事情、少数株主との関係の経過、事前開示書面の記載、株主総会での説明、端数の処理と買取りの手続を一体として設計し、決議の無効・取消しを主張されるおそれを踏まえて準備を進めます。少数株主の排除に関する当事務所の対応は少数株主の排除・スクイーズアウトに関する御相談で、少数株主との紛争全般については少数株主とのトラブルに関する会社側の総合相談で御案内しています。少数株主対策・スクイーズアウトに関するほかの裁判例は、少数株主対策・スクイーズアウトの裁判例の解説記事一覧をご覧ください。

少数株主対策・スクイーズアウトに関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所
03-6435-8418
受付時間 8:00~21:00(土日祝含む)

資料がすべてそろっていない段階でも御相談いただけます。御相談は事前予約制です。秘密は厳守します。

この記事の位置付け

非上場会社が、対立関係にある親族株主を株式併合により株主から外した場面の判例を、会社・支配株主の側から、決議の無効・取消しを避けるために整えておくべき目的と手続の観点から解説します。

少数株主の排除を検討している会社の当事務所の対応は、少数株主の排除・スクイーズアウトに関する御相談のページで御案内しています。

具体的な御相談をお考えの皆様へ

株式併合などによるスクイーズアウト・株式の集約を、会社・支配株主の側から設計する場合の当事務所の取扱内容及び対応の進め方は、次のご案内をご覧ください。

スクイーズアウト・株式の集約に関する御相談

執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

2024年(令和6年)10月に最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得た弁護士です。長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件にも関与しています。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門4丁目3番1号 森トラスト城山トラストタワー17階/電話番号 03-6435-8418/受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

著書

非上場会社における少数株主対策の手法と実務
『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策
『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
03-6435-8418受付 8:00〜21:00(土日祝含む)フォームLINE
スクイーズアウトのご相談03-6435-8418受付 8:00〜21:00(土日祝含む)フォームLINE