少数株式は何パーセントディスカウントされるのか

 支配権の有無に着目する考え方

会社の経営を支配することができる規模の株式と、そうでない株式とでは、株主が得られる経済的な利益が異なるという見方があります。この見方によれば、支配権を伴わない株式は、伴う株式よりも低く評価されるべきことになります。

もっとも、この考え方が常に妥当するわけではありません。用いる評価の手法によっては、そもそも支配権の有無が結論に反映される構造となっている場合があります。たとえば、株主が受け取る配当に着目する手法は、支配権を有しない株主の立場を前提とした算定であるという整理が可能です。この場合に、さらに減価を行うことは、二重の減価となり得ます。

 流動性に着目する考え方

非上場株式には市場がなく、株主が保有株式を換価しようとしても、相手方を見つけることが容易ではありません。この事情を価格に反映させるべきであるという見方があります。

この考え方についても、常に妥当するわけではありません。とりわけ、会社法上の制度に基づいて会社又は指定された者が買い取る場面においては、株主が換価の相手方を探す必要がないという構造になっています。この構造を踏まえると、流動性の欠如を理由とする減価をどう位置付けるかが論点となります。

 場面によって扱いが異なります

減価の可否は、当事者間の任意の売買における場面と、会社法上の制度に基づいて価格が決定される場面とで、議論の前提が異なります。前者は当事者の合意によって定まる領域であり、後者は制度の趣旨に沿った判断がなされる領域です。

裁判実務における取扱いは、制度の種類と事案の性質によって異なります。具体的な率を一般化して述べることはできません。

要件と論点

 「何パーセント」という問いの立て方が適切でない理由

第一に、減価の可否そのものが場面によって異なります。率の議論は、可否の議論の後に来るものです。

第二に、用いる評価の手法によって、減価が既に織り込まれている場合があります。手法を確定しないまま率を論じることはできません。

第三に、対象となる株式の持株比率、他の株主の構成、定款の定めによって、当該株式が有する意味は異なります。同じ持株比率であっても、他の株主が分散している場合と、支配株主が存在する場合とでは、位置付けが異なります。

第四に、公表されている調査や研究において示される数値は、対象となった取引の性質、時期、市場の状況を前提としたものです。個別の案件にそのまま当てはめることはできません。

 会社側が主張する場合の留意点

会社側としては、減価を主張することが自社に有利であると考えがちです。しかし、次の点に留意が必要です。

第一に、根拠を示さないまま率のみを主張しても、説得力を持ちません。第二に、用いた評価の手法との整合が問われます。手法の中で既に反映されている要素を、重ねて差し引くことは、指摘の対象となります。第三に、他の株主との関係において、過去の取得の実績との整合が問われることがあります。

 株主側の主張への対応

株主側からは、減価を行うべきではないという主張がなされることがあります。この主張の根拠が、制度の趣旨に基づくものであるか、評価の手法の構造に基づくものであるかを見極める必要があります。

表2 論点の整理

論点 会社側が確認すべき点
場面の特定 任意の売買か、制度に基づく価格の決定か
手法の確定 どの手法を用いるか。手法の中で支配権の有無が反映されているか
対象株式の性質 持株比率、他の株主の構成、定款の定め
二重の調整の有無 同じ要素が複数の段階で反映されていないか
根拠資料 主張を裏付ける資料があるか
過去の実績との整合 過去の取得における取扱いと整合するか

会社側の実務

 率から入らず、構造から入ります

社内での検討においては、「何パーセント下げられるか」ではなく、「どの手法を用い、その手法において支配権と流動性がどのように扱われるか」という順序で検討してください。この順序を守ることが、後に主張が崩れないための前提となります。

 算定書における記載を確認します

会社側又は株主側が取得した算定書に減価の記載がある場合、その率の根拠、参照した資料、適用した段階を確認してください。記載が形式的なものにとどまっている場合、手続において十分な意味を持たないことがあります。

 断定的な表現を避けます

社内の資料及び相手方への説明において、少数株式は当然に大幅な減価がなされるといった断定的な表現を用いることは避けてください。根拠を欠く断定は、後に主張の信用性を損ないます。

 他の株主との関係を確認します

減価の取扱いは、当該株主との関係のみで完結するものではありません。他の株主との間で将来同様の場面が生じた場合に、今回の取扱いが参照されることがあります。とりわけ、複数の株主から相前後して買取りの申出がなされている場合には、全体を見通した方針を定めておく必要があります。

 記録の整備

検討の経緯、参照した資料、算定の前提条件、社内での議論の内容は、記録として保存してください。後日、裁判所の手続に進んだ場合に、これらの記録が意味を持ちます。とりわけ、算定の前提条件については、なぜその前提を採ったのかという理由を併せて記録しておくことが有用です。

関連する手続

協議によって折り合わない場合、制度によっては、裁判所に価格の決定を求める手続が用意されています。この手続においては、減価の可否と程度も検討の対象となります。会社側としては、協議の段階で述べた主張と、手続における主張との整合が問われることになりますので、早い段階から一貫した整理を行っておく必要があります。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めにご確認いただくことをお勧めします。

弁護士に相談する意味

第一に、場面の特定です。減価の議論は、どの制度の下にあるかによって前提が変わります。制度を取り違えたまま検討することは、労力の浪費につながります。

第二に、手法との整合の検討です。評価の手法の構造を踏まえずに減価を主張すると、二重の調整であるとの指摘を受けることがあります。

第三に、主張の裏付けです。率を主張するのであれば、その根拠を示す必要があります。根拠の整備には、会計及び財務に関する専門家との連携が有用な場合があります。

第四に、過去の実績との整合です。過去に会社が株式を取得した経緯がある場合、その取扱いとの整合が問われます。

なお、具体的な主張の組立てと進め方は、株主構成、財務状況、株価、従前の経緯等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。

当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。ご相談は事前予約制です。

よくある質問

質問1 書籍やインターネットに、30パーセント程度という記載がありました。参考になりますか。

そうした記載は、特定の調査や取引の類型を前提としたものです。個別の案件にそのまま当てはめることはできません。参考として把握することは差し支えありませんが、主張の根拠としては足りません。

質問2 配当還元法を用いる場合にも、減価を行うのですか。

株主が受け取る配当に着目する手法は、支配権を有しない株主の立場を前提とした算定であるという整理が可能です。この場合、さらに減価を行うことが二重の調整に当たらないかが論点となります。

質問3 持株比率が高い株主の株式にも減価を行うのですか。

対象となる株式が会社の経営に対してどのような意味を持つかによって異なります。持株比率のみによって一律に判断されるものではありません。

質問4 過去に減価を行わずに取得した実績があります。今回は減価を主張できますか。

過去の取扱いとの整合は問われ得ます。過去の取引の経緯と、その際に用いた前提条件を確認したうえで検討する必要があります。

質問5 相談の際には何を持参すればよいですか。

定款、株主名簿、直近3期から5期分の計算書類、株主から受領した書面、算定書がある場合はその写し、過去に株式の売買がある場合はその資料をご持参ください。

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