少数株主との紛争で会社が弁護士に相談すべきタイミング

段階が進むほど、採り得る手段が限られ、また、要する費用と時間が増加します。
平時の段階
対立が顕在化していない段階では、最も多くの手段を採ることができます。
株主名簿の整備、定款の点検と変更、合意による株式の取得、種類株式の設計といった対策は、いずれもこの段階でこそ実行が容易です。定款の変更には株主総会の決議を要しますので、対立が生じる前に行っておく必要があります。
もっとも、この段階では問題が顕在化していないため、着手のきっかけがありません。事業承継、M&Aの検討、株主の高齢化といった契機を捉えて着手することが望まれます。
予兆の段階
株主が売却の意向を示した、不満を表明した、面談を求めてきたという段階です。
この段階では、まだ合意による解決の余地が残されています。また、相手方が権利行使を開始する前ですので、会社側が体制を整える時間があります。
この段階でのご相談は、費用の面でも、時間の面でも、最も効率的です。
有事の段階
会計帳簿閲覧謄写請求、株式譲渡承認請求、株主総会の招集の請求といった権利行使が始まった段階です。
これらの手続には期限が関係します。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めにご確認いただくことをお勧めします。書面を受領した段階でご相談をいただくことが望まれます。
この段階では、個別の請求への対応に加えて、株主構成の整理という中期的な方針を並行して検討することになります。
訴訟有事の段階
裁判所の手続に至った段階です。主張と資料の整備が中心となります。
この段階でも対応は可能ですが、それまでの経緯、発言、記録が前提となります。初期の段階での対応が適切でなかった場合、その影響を受けることになります。
早期の相談が有効な理由
時間を要する対策があります
表2 時間を要する対策の例
| 対策 | 要する時間の要因 |
|---|---|
| 株主名簿の整備 | 過去の資料の探索、相続の経緯の調査 |
| 所在不明株主の整理 | 制度上の手続に要する期間 |
| 定款の変更 | 株主総会の招集と決議 |
| 合意による株式の取得 | 相手方との協議 |
| 法律上の手続による整理 | 手続の期間、価格が争われた場合の期間 |
これらは、いずれも短期間で完了するものではありません。M&A、事業承継といった日程がある場合には、逆算した着手が必要です。
対立の後は決議が成立しないことがあります
定款の変更、種類株式の導入といった対策は、株主総会の決議を要します。対立している株主の議決権の割合によっては、決議が成立しません。
したがって、これらの対策は、対立が顕在化する前に行っておく必要があります。
初期の対応が後の展開を左右します
紛争の初期の段階における発言、提示した金額、示した書面は、後の交渉と手続において引用されます。これらは後から取り消すことができません。
この点については、初動対応に関する記事において詳しく整理しております。
期限のある手続があります
株主の権利行使の中には、会社側の対応に期限が関係するものがあります。書面を受領してから相談までの時間が、そのまま準備に使える時間の減少となります。
例外及び注意点
「まだ何も起きていない」という判断
問題が起きていないという判断は、多くの場合、会社側から見た評価です。株主の側では、既に不満が蓄積し、外部の助言を受けていることがあります。
株式が分散している、高齢の株主がいる、元役員が株主として残っている、株主名簿が古いといった事情がある場合には、問題が起きていない段階でのご相談が有効です。
相手方に代理人が付いた場合
相手方に弁護士その他の代理人が付いた場合には、会社側も代理人を立てて対応することが望まれます。当事者が直接やり取りを続けると、発言が記録として残ります。
顧問の税理士との関係
株式の評価、税務上の取扱いについては、税理士その他の税務専門家の関与が必要です。他方で、会社法上の手続、権利行使への対応、紛争の見通しについては、法律上の判断を要します。
当事務所は、必要に応じて税務の専門家と連携して対応いたします。
既に対応を進めてしまった場合
既に発言をしてしまった、金額を提示してしまった、手続を実行してしまったという場合であっても、その時点からできることはあります。早期にご相談ください。
立場の確認
当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。同一の会社をめぐる紛争において、株主側と会社側の双方からご依頼をお受けすることはできません。この点から、ご相談の順序が結果に影響することがあります。
次に確認すること
表3 ご相談の前に整理していただく事項
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 株主構成 | 株主名簿、各株主の関係、株式数と割合 |
| 現在の状況 | 平時、予兆、有事、訴訟有事のいずれか |
| 受領した書面 | 原本又は写し、封筒、到達の日 |
| 経緯 | これまでのやり取りと発言 |
| 定款等 | 定款、登記事項証明書 |
| 財務 | 直近3期分の計算書類 |
| 日程 | 事業承継、M&A、株主総会の予定 |
| 目標 | 最終的に目指す株主構成 |
弁護士に相談する意味
ご相談をいただく時期によって、当事務所がご提供できる内容は異なります。
平時であれば、株主構成の設計から関与することができます。予兆の段階であれば、合意による解決の可能性を探ることができます。有事の段階であれば、期限の管理と個別の対応を行うことができます。訴訟有事の段階であれば、主張と資料の整備を行うことになります。
いずれの段階であっても対応は可能です。もっとも、早い段階ほど、選択肢が多く、費用と時間の負担が軽くなります。
とりわけ、株式が分散したまま長年が経過している会社、高齢の株主がいる会社、事業承継又はM&Aを視野に入れている会社については、問題が顕在化していない段階でのご相談をお勧めいたします。
当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。ご相談は事前予約制です。
よくある質問
質問1 まだ書面も届いていません。相談してよいですか。
問題が顕在化していない段階でのご相談が、最も選択肢が多い段階です。ご相談ください。
質問2 書面が届きました。いつまでに相談すべきですか。
期限のある手続が含まれている場合があります。受領した段階でご相談ください。
質問3 顧問の税理士に相談しています。
株式の評価、税務上の取扱いについては税務専門家の関与が必要です。会社法上の手続と紛争の見通しについては、別途の検討が必要です。
質問4 既に相手方と話を進めてしまいました。
その時点からできることはあります。経緯を整理したうえでご相談ください。
質問5 相談の際には何を持参すればよいですか。
定款、登記事項証明書、株主名簿、直近3期分の計算書類、受領した書面がある場合はその原本又は写し、これまでのやり取りが分かる資料をご持参ください。
関連するご案内
少数株主との間に問題を抱える会社の方は、敵対的少数株主・株式買取業者トラブル総合をご覧ください。平時の対策から、権利行使への対応、裁判所の手続までを、会社側の立場から整理してご案内しております。ご相談は事前予約制です。
- 少数株主との紛争で会社がしてはいけない初動対応
- 敵対的少数株主とは何か|会社に生じる問題と対応
- 株主名簿が古い会社がまず確認すべきこと
- M&A前に少数株主を整理する必要がある理由
- 会社が少数株主の株式を任意に買い取る方法
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
このページの位置付けと、関連するページ
本ページは、少数株主からの要求に対する初動対応に関する解説のうち、「少数株主との紛争で会社が弁護士に相談すべきタイミング」という論点を扱うページです。少数株主からの要求に対する初動対応の全体像は、次の中核となるページを御覧ください。
同じ主題を扱う関連ページ
具体的な御相談をお考えの会社の皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。


