株主名簿が古い会社がまず確認すべきこと

長年にわたり株主名簿を更新しておらず、記載されている株主の中には既に死亡した方や連絡が取れなくなった方が含まれているが、このままで問題はないのだろうかという非上場会社の経営者の方から、御相談をいただくことがあります。

この場面で問題となるのは、株主名簿が実態と一致していない状態が、M&Aのデューデリジェンスの場面や事業承継の計画を立てる場面で表面化し、手続を進めるうえでの大きな障害となる点です。

以下では、株主名簿を放置した場合に生じる問題、及び会社がまず確認すべき事項を御説明します。

M&A デューデリジェンスにおいて問題となります
事業承継 承継の計画を立てることができません

 放置した場合に生じること

株主名簿が古いまま放置されると、時間の経過とともに問題が拡大します。

株主に相続が発生すると、相続人が株主となります。その相続人にも相続が発生すると、さらに分散します。世代を重ねるほど、会社との関係が薄い者が株主となり、連絡も困難になります。

また、過去の資料を保管していた者が退職し、あるいは亡くなると、経緯を知る者がいなくなります。この段階に至ると、整備そのものが困難になります。

 早期に着手すべき理由

整備は、早く着手するほど容易です。関係者が存命であり、資料が残っており、相続の回数が少ないうちに行うべき作業です。

何から確認するか

表2 確認すべき資料の順序

順序 確認する資料 確認する内容
第1 現在の株主名簿 記載の内容、最後に更新した時期
第2 登記事項証明書 発行済株式の総数、株式の種類、譲渡制限の有無
第3 定款 株券の発行、譲渡制限、種類株式に関する定め
第4 設立時の資料 発起人、当初の株主
第5 増資に関する資料 引受人、払込みの記録
第6 株主総会の議事録 出席した株主、議決権の数
第7 法人税の申告書の別表 同族会社の判定に関する記載
第8 株式の移転に関する資料 譲渡の承認、名義書換の請求
第9 配当の記録 交付の相手方
第10 株券 発行の有無、所在

 登記事項証明書と定款を先に確認します

発行済株式の総数、株式の種類、譲渡制限の有無、株券を発行する旨の定めの有無を確認してください。これらが、その後の作業の枠組みを定めます。

株主名簿に記載された株式数の合計と、登記された発行済株式の総数とが一致するかを確認してください。一致しない場合、その原因の解明が必要です。

 法人税の申告書の別表を確認します

同族会社の判定に関する記載には、株主に関する情報が含まれています。年度ごとの記載を比較することによって、株主の異動の時期を推定できることがあります。

もっとも、この記載は税務上の目的で作成されたものであり、会社法上の株主名簿に代わるものではありません。手掛かりとして用いるにとどめてください。

 株主総会の議事録を確認します

出席した株主、議決権の数の記載から、当時の株主構成を確認できることがあります。

 株券の有無を確認します

株券を発行する旨の定款の定めがある会社においては、株券の所在が問題となります。定めがあるにもかかわらず株券を発行していない場合、その取扱いを検討する必要があります。

例外及び注意点

 名義株式の可能性

古い会社においては、設立時の人数の要件を満たすため、実際には出資していない者の名義を借りて株式を引き受けたという経緯があることがあります。

この場合、株主名簿上の株主と実質の株主が異なることになり、株主権の帰属そのものが問題となります。この点については、株主権の帰属に関する既存の記事をご参照ください。

 相続が重なっている場合

株主名簿上の株主が既に亡くなっており、その相続人も亡くなっているという場合があります。この場合、現在の権利者を特定するために、複数の相続の経緯を確認する必要があります。

 所在が分からない株主がいる場合

所在が分からない株主については、制度上の取扱いが定められています。この点については、所在不明株主に関する既存の記事をご参照ください。

 名簿を作り直すことの可否

株主名簿が存在しない、あるいは著しく不正確である場合、新たに作成することになります。もっとも、根拠のないまま会社の都合で記載を変更することはできません。

作成にあたっては、根拠となる資料を整理し、その経緯を記録として残してください。

 株主に確認を求める場合

株主に対して現況の確認を求める場合、その方法と内容について検討が必要です。確認を機に、株主から株式の買取りを求められる、権利を行使されるという展開があり得ます。

次に確認すること

表3 ご相談の際に整理していただく事項

項目 内容
名簿 現在の株主名簿、最後に更新した時期
登記 登記事項証明書
定款 現在の定款、変更の経緯
設立 設立の時期、設立時の資料
増資 増資の有無と時期
議事録 過去の株主総会の議事録
申告書 法人税の申告書の別表
株券 発行の有無、所在
把握している株主 連絡がつく株主とつかない株主
目的 事業承継、M&A、紛争への備えその他

 目的を明確にします

何のために整備するのかによって、必要となる精度と期間が異なります。M&Aを控えている場合には、より高い精度が求められます。

 資料の所在を確認します

古い資料が、会社、税理士事務所、金融機関、関係者の手元のいずれにあるかを確認してください。

 順序を決めます

すべてを同時に進めることはできません。確認の順序を決めたうえで着手してください。

弁護士に相談する意味

株主名簿の整備は、単なる事務作業ではありません。株式の移転の効力、株主権の帰属といった法律上の判断を伴います。

とりわけ、名義株式の可能性がある場合、相続が重なっている場合には、誰が現在の株主であるかについて法的な判断が必要となります。この判断を誤ったまま名簿を作成すると、後日、株主権の帰属が争われる原因となります。

また、株主に対して確認を求める場合、その方法によっては、権利行使のきっかけとなることがあります。事前の検討が必要です。

さらに、整備の作業は、少数株主の整理と一体のものとして進めることが効率的です。名簿を整えるだけで終わらせず、その先の株主構成の設計まで見据えることをお勧めいたします。

なお、株主への確認の方法、整備の進め方については、事案ごとに異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウに属するため、本記事では詳細を開示しておりません。

当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。ご相談は事前予約制です。

よくある質問

質問1 株主名簿がそもそもありません。

作成することになります。根拠となる資料を整理したうえで、経緯を記録として残してください。

質問2 法人税の申告書の記載をそのまま使えますか。

手掛かりとはなりますが、会社法上の株主名簿に代わるものではありません。

質問3 連絡のつかない株主がいます。

所在不明株主については制度上の取扱いが定められています。別の記事をご参照のうえ、ご相談ください。

質問4 株主に手紙を出して確認してもよいですか。

方法と内容について検討が必要です。確認を機に権利行使が始まることがあります。

質問5 相談の際には何を持参すればよいですか。

現在の株主名簿、定款、登記事項証明書、過去の株主総会の議事録、法人税の申告書の別表、設立及び増資に関する資料、株券がある場合はその写しをご持参ください。

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株主名簿の整備を進めたい会社の方は、M&A・事業承継前の株主構成クリーンアップをご覧ください。株主名簿の整備から、少数株式の取得、株主構成の設計までを、会社側の立場から整理してご案内しております。ご相談は事前予約制です。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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