株式買取業者の業務は違法なのか|会社側が知るべき考え方

株主から「専門の業者に相談している」と告げられた。面識のない事業者から株式を取得したという通知が届いた。インターネットで検索したところ、こうした事業者について厳しい評価が書かれた記事が多く見つかった。発行会社の代表取締役、法務責任者の方から、「この業者の業務は違法ではないのですか」というご相談をいただくことがあります。

結論から申し上げます。非上場株式の買取りを業として行う事業者について、一律に違法であると断定することはできません。株式を買い取ること自体は取引行為であり、それを業として行うことを一般的に禁止する法令はありません。他方で、具体的な業務の態様によっては、弁護士法その他の法令との関係で法的問題が生じる場合があります。したがって、評価は事業者ごと、案件ごとに行う必要があります。

そして、会社側にとってより重要な点があります。仮に相手方の業務の態様に法的問題があるとしても、そのことによって、少数株主本人が会社法上有している権利が消滅するわけではないという点です。「業者に問題があるから、会社は何もしなくてよい」という理解は誤りです。会社側の対応は、相手方の属性の評価ではなく、行使されている権利の内容と要件に即して組み立てる必要があります。

なぜ一律に違法と断定できないのか

 買い取ること自体は取引行為です

株式は財産権であり、その譲渡は当事者間の合意によって行われる取引です。買主が個人であるか事業者であるかによって、取引の効力が左右されるものではありません。買取りを業として行うことを一般的に禁止する法令はありません。

したがって、「業者であるから違法である」という命題は成り立ちません。会社側がこの前提で対応を組み立てると、判断を誤るおそれがあります。

 問題となり得るのは業務の態様です

他方で、業務の態様によっては、法令との関係で問題が生じ得ます。とりわけ議論されるのは、当該事業者が、自らが買主として取引を行っているのか、それとも実質的には他人の法律事務を取り扱っているのかという点です。

弁護士法は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱うことを業とすることを規制しています。この規制の趣旨は、法律事務の適正を確保し、依頼者の利益を保護することにあります。したがって、形式的に売買の形をとっていても、実質的に他人の権利の実現を代行していると評価される場合には、規制との関係が問題となり得ます。

もっとも、この評価は、契約の内容、代金の支払の方法、取得後の権利行使の主体、当事者間の実質的な利害の帰属といった多数の事情を総合して行われるものです。外形のみから直ちに判断できる事柄ではありません。

 会社側が断定的な評価を述べることの危険

会社が、株主又は事業者に対して「貴社の業務は違法である」と断定的に述べることには、危険が伴います。第一に、その評価が誤っていた場合、会社側の信用が損なわれ、その後の交渉及び手続において不利に働くおそれがあります。第二に、断定的な表現が名誉に関する紛争を新たに生じさせるおそれがあります。第三に、相手方の属性に関する議論に労力を割くことによって、本来検討すべき権利行使への対応が後手に回るおそれがあります。

会社側が押さえるべき利益構造の違い

 買主は株主本人の代理人ではありません

会社側が理解しておくべき最も実務的な点は、株式を買い取る事業者は、買主であって、株主本人の代理人ではないという点です。買主と売主とは、価格について反対の利害を有します。

このことは、会社側の対応にも影響します。すなわち、当該事業者が株主となった後は、その者が自らの利益のために権利を行使することになります。従前の親族株主又は元役員株主との間にあった人間関係や経緯を前提とした対応は、通用しないことがあります。

表1 従前の株主と第三者である株主との違い

観点 従前の親族株主・元役員株主 第三者である株主
会社との関係 過去の経緯及び人間関係があります 経緯を前提としません
関心 処遇、感情、家族関係を含みます 経済的な条件に集約されることが多いといえます
手続の進め方 話合いによる解決が図られることがあります 書面と手続によって進行することが多いといえます
会社側の対応 経緯を踏まえた説明が有効な場合があります 要件と根拠に即した対応が中心となります

 株主本人の立場も併せて把握します

会社側としては、非上場株式を売却しようとしている株主本人が、どのような条件で売却しようとしているのかを把握しておくことにも意味があります。買主と売主とは価格について反対の利害を有しますので、株主本人にとって、会社又は支配株主との間で条件を協議することが選択肢となる場合があります。

もっとも、会社が株主本人に対して、売却先の選択について働きかけることには慎重であるべきです。会社は株主の処分を妨げる権限を有しておらず、また、後日の手続において会社側の言動が問題とされることがあります。

 権利の内容は変わりません

第三者が株主となった場合であっても、その者が行使できる権利は、会社法が株主に認めた権利の範囲にとどまります。株主となることによって新たな権利が生じるわけではありません。したがって、会社側としては、行使された権利ごとに要件を審査し、応じるべき範囲と応じる必要のない範囲を切り分けるという基本の対応に変わりはありません。

要件と論点の整理

表2 会社側が確認すべき論点

論点 確認の内容
株式の取得の有無 当該事業者が実際に株式を取得したのか。取得を証する資料があるか
承認の有無 定款に譲渡制限の定めがある場合、会社の承認を経ているか
請求の内容 名義書換の請求か、承認の請求か、株主としての権利行使か
請求の要件 行使されている権利について、持株比率、保有期間その他の要件を満たしているか
期限 会社が対応すべき期間はいつまでか。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めにご確認いただくことをお勧めします
記録 受領した書面、封筒、連絡の経緯が記録として保存されているか

これらの論点は、相手方が事業者であるかどうかにかかわらず共通します。会社側の検討は、この共通の枠組みに沿って進めることが適切です。

会社側の実務

 属性ではなく行為に即して対応します

相手方が事業者であるという事実は、対応の方針を決める際の一要素にとどまります。実際に何が請求されているのか、その請求が要件を満たしているのかという点から検討してください。

 説明の表現に注意します

社内の会議、株主に対する説明、書面での回答において、相手方を一律に違法であると評価する表現は用いないでください。「具体的な業務の態様によっては法的問題が生じる場合がある」という水準にとどめることが適切です。

 他の株主への波及を検討します

一人の株主が第三者へ売却する意向を示している場合、他の株主にも同様の動きが生じることがあります。株主構成の全体について、現状と今後の見通しを整理しておくことが望まれます。

 記録を整えます

受領した書面の原本、封筒、社内での検討の経緯、相手方との連絡の内容は、すべて保存してください。後日、裁判手続に至った場合に、これらの記録が意味を持ちます。

 社内での説明の仕方を統一します

このような通知が届いた事実は、社内で断片的に伝わると憶測を招きます。役員及び従業員に対しては、事実関係と対応の窓口のみを伝え、相手方に対する評価を含む説明を行わないことが適切です。

とりわけ、取引先、金融機関からの照会に対する回答については、あらかじめ方針を定めておく必要があります。会社の信用に関わる事柄ですので、担当者ごとに異なる説明がなされることは避けなければなりません。

表3 社内の情報の取扱いの方針

事項 方針
窓口 対応の窓口を一本化し、その他の者は個別に応答しないこととします
共有の範囲 事実関係と窓口のみを共有し、評価及び見通しは共有の対象としません
外部からの照会 回答の要否と内容をあらかじめ定め、担当者の判断で回答しないこととします
記録 相手方との連絡はすべて記録し、口頭のみのやり取りを残さないこととします
資料 株主名簿、定款、議事録、計算書類を速やかに参照できる状態に整えます

弁護士に相談する意味

第一に、相手方の業務の態様に関する評価は、契約の内容その他の多数の事情を総合して行う必要があり、外形のみから判断できるものではありません。会社が独自に評価を確定させ、その前提で対応を進めることには危険が伴います。

第二に、会社側が採るべき対応は、相手方の属性ではなく、行使されている権利の内容と要件によって定まります。権利ごとの要件審査と期限の管理には、会社法上の検討が必要です。

第三に、第三者が株主となった後の局面では、資料の開示、価格、手続の進め方をめぐって、書面によるやり取りが中心となります。窓口を代理人に一本化することにより、社内の負担を軽減し、記録を整えることができます。

第四に、対応の方針は、株主構成、財務状況、株価、従前の経緯等により異なります。具体的な進め方は、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。

当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。ご相談は事前予約制です。

よくある質問

質問1 業者が株主となった場合、会社はその者を株主として扱わなければなりませんか。

定款に譲渡制限の定めがある会社において、会社の承認を経ていない譲渡については、会社との関係でその効力を主張することができないという扱いとなります。承認を経ているか否かを確認したうえで判断することになります。

質問2 業者の業務に問題があると考えられる場合、会社は取引の効力を争えますか。

そのような主張が可能かどうかは、契約の内容、取得の経緯、会社が置かれた状況によって異なります。主張の可否と、主張することが会社にとって適切であるかどうかは別の問題ですので、判断の前にご相談ください。

質問3 業者から高額な価格を提示された場合、応じる必要がありますか。

提示された価格に応じる義務があるわけではありません。会社側としては、価格についての自らの考え方を根拠とともに整理する必要があります。価格については、株価に関する記事群をご参照ください。

質問4 インターネット上の情報をそのまま前提にしてよいですか。

インターネット上には、立場の異なる情報が混在しております。会社側の対応は、貴社の定款、株主名簿、受領した書面という具体的な資料に基づいて組み立てる必要があります。

質問5 相談の際には何を持参すればよいですか。

受領した書面の原本又は写しと封筒、定款、株主名簿、直近3期分の計算書類、株主総会及び取締役会の議事録、株主とのやり取りの記録をご持参ください。

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必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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