知らない会社から株主になったと連絡が来た場合の対応

面識のない会社から、「貴社の株式を取得しましたので、株主名簿の名義書換をお願いします」という書面が届いた。差出人を調べても取引の記録がなく、社内の誰も心当たりがない。あるいは、個人名義で「株主になりました。株主総会の招集通知を送付してください」という連絡が届いた。発行会社の総務、法務のご担当者から、このようなご相談をいただくことがあります。

結論から申し上げます。このような連絡を受領した場合、会社がその場で名義書換に応じる必要はありません。また、無視することも適切ではありません。まず、その者が本当に株式を取得したのか、取得の経緯はどのようなものか、定款に譲渡制限の定めがある場合に会社の承認を経ているのかを確認します。確認が済むまでは、名義書換にも、株主としての取扱いにも、応じないという整理が基本となります。

本記事では、結論に至る理由と、最初に確認すべき事項を平易に整理いたします。制度の詳細には立ち入りませんので、続けてお読みいただく記事を末尾にご案内いたします。

なぜ、その場で応じる必要がないのか

 株主名簿の名義書換は、請求があれば当然に行うものではありません

株式を取得したと主張する者から名義書換の請求があった場合、発行会社は、その請求が適法なものであるかを確認したうえで対応します。請求書が届いたという事実だけで、直ちに書換えの義務が生じるわけではありません。

とりわけ、非上場会社の多くは、定款において株式の譲渡について会社の承認を要する旨を定めています。この定めがある会社において、会社の承認を経ずに行われた譲渡は、会社との関係でその効力を主張することができないという扱いとなります。したがって、承認の有無は最初に確認すべき事項です。

 無視することも適切ではありません

他方で、連絡を放置することも適切ではありません。第一に、その者が適法に株式を取得している可能性があります。第二に、会社が対応しないこと自体が、後日の手続において会社にとって不利に評価されることがあります。第三に、対応の遅れによって、会社が回答すべき期間を徒過するおそれがあります。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めにご確認いただくことをお勧めします。

適切な対応は、応じることでも無視することでもなく、確認したうえで回答することです。

最初に確認する事項

表1 連絡を受領した直後に確認する事項

確認事項 具体的な内容
書面そのもの 到達した日、封筒、送付の方法、差出人の名称と所在地、代理人の有無
主張されている取得の経緯 誰から、いつ、何株を、どのような原因(売買、贈与、相続、合併等)で取得したと主張しているか
株主名簿の記載 主張されている譲渡人が、現に株主名簿に記載されているか、株式数は一致するか
定款の定め 譲渡制限の定めの有無と内容、承認機関はどこか、相続人等に対する売渡しの請求に関する定めの有無
承認の有無 会社が譲渡を承認した記録があるか。取締役会又は株主総会の議事録を確認します
株券の有無 株券発行会社であるか。株券が現に発行されているか
添付資料 譲渡契約書、株券の写し、戸籍等が添付されているか。添付がない場合はその旨を記録します
過去の経緯 譲渡人とされる株主から、事前に譲渡の申出や照会があったか

 差出人が株式買取業者である場合

差出人が、非上場株式の買取りを業として行う事業者である場合があります。この場合であっても、その事業者を一律に違法と評価することはできません。具体的な業務の態様によっては、弁護士法その他の法令との関係で法的問題が生じる場合がありますが、それは態様ごとに判断される事柄です。

会社側として重要なのは、相手方の属性を評価することではなく、株式の取得が適法に行われたかどうかを確認することです。

 相続によって株主となったと主張している場合

株主に相続が発生し、その相続人から連絡が届く場合があります。この場合、譲渡制限の定めがある会社であっても、相続による承継は譲渡には当たらないという整理がなされるのが通常です。もっとも、定款に相続人等に対する売渡しの請求に関する定めが置かれている場合には、会社が検討し得る手続があります。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めにご確認いただくことをお勧めします。

例外及び注意点

 安易に「株主として扱う」対応を避けます

確認が済まないうちに、招集通知を送付し、配当を支払い、資料を交付するといった対応を行うことは避けるべきです。これらの対応は、会社が相手方を株主として承認したものと受け取られるおそれがあります。

 安易に「株主ではない」と断定する回答も避けます

他方で、確認が済まないうちに断定的に否定する回答を行うことも適切ではありません。相手方が適法に株式を取得していた場合、会社の回答が後日の手続において問題とされることがあります。確認中である旨と、確認のために必要な資料の提出を求める旨を記載した回答を行うことが、実務上の基本的な対応となります。

 記録を残します

受領した書面、封筒、社内での検討の経緯、相手方との連絡の内容は、すべて記録として保存してください。後日、裁判手続に至った場合に、これらの記録が重要な意味を持ちます。

次に確認すること

表2 確認の順序

順序 行うこと
第1 受領した書面の原本を保管し、到達日を記録します
第2 定款を確認し、譲渡制限の定めの有無と承認機関を特定します
第3 株主名簿を確認し、譲渡人とされる者の記載と株式数を照合します
第4 過去の取締役会及び株主総会の議事録を確認し、承認の記録の有無を調べます
第5 期限を確認します。相手方が指定した期限と、会社法上の対応期間の双方を確認します
第6 回答の方針を決定します。決定の前に弁護士へご相談ください

弁護士に相談する意味

このような連絡は、単発の照会で終わる場合もあれば、その後に会計帳簿の閲覧謄写の請求、株主総会の招集の請求、株式の買取りの要求へと展開する場合もあります。初期の回答の内容は、その後の手続における会社の立場に影響します。また、譲渡が適法であったかどうかの判断には、定款の解釈、過去の議事録の評価、株券の有無、当事者間の合意の内容といった複数の要素の検討が必要です。

当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。ご相談は事前予約制です。

よくある質問

質問1 差出人に電話をして事情を聞いてもよいですか。

電話での応対は、記録が残りにくく、後日、発言の内容が争われることがあります。連絡は書面によることが望ましく、回答の内容についても、事前に方針を定めておくことをお勧めいたします。

質問2 株主名簿に記載しなければ、相手方は株主ではないということになりますか。

株主名簿への記載は、会社に対して株主であることを主張するための要件として位置付けられます。記載がないことをもって、当事者間の株式の取得そのものが無効となるわけではありません。両者は区別して考える必要があります。

質問3 相談の際には何を持参すればよいですか。

受領した書面の原本又は写しと封筒、定款、株主名簿、直近の登記事項証明書、過去3期分の株主総会及び取締役会の議事録、株券を発行している場合はその状況が分かる資料をご持参ください。

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必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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