スクイーズアウトの方法(株式併合と現金対価株式交換)!

スクイーズアウトの方法(株式併合と現金対価株式交換)!

この記事の位置付け

株式の併合と現金対価株式交換の使い分けに関するメインのページです。本ページは、発行会社の側から、二つの手法の手続を並べて比較し選択の分かれ目をご説明します。現金対価株式交換の詳細は別のページをご参照ください。

▶ スクイーズアウトとは 手法・メリットデメリット・手続きの流れを経営者向けに解説

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少数株主を排除したいが、株式併合と現金を対価とする株式交換のどちらを選ぶべきか分からない。受皿となる会社を用意すべきかどうかも決められずにいる。

本記事は、株式併合と現金対価株式交換のいずれによりスクイーズアウトを行うかを比較検討している経営者の方に向けたものです。

株式併合では対象会社が端数を買い取り、現金対価株式交換では買収会社が株式を取得します。受皿となる会社の有無、資金の負担、手続の重さと日程、争いの見通しを踏まえて選択し、税務上の取扱いは必ず個別に確認します。以下、順にご説明します。

スクイーズアウト株式併合と現金対価株式交換の対比

現金対価株式交換 株式併合
株主から見て
M&Aか株主排除か?
M&A 株主排除
ストラクチャー 交換対価を現金で設定し、効力発生日に現金を支払い、株式を取得する 株式併合に伴い、併合割合を調整し、少数株主に端株を生じさせ、裁判所に対する株式買取許可申請に基づき端株を買い取る
株式取得者 買収会社 対象会社
議決要件 株主総会の特別決議(3分の2) 株主総会の特別決議(3分の2)
事前開示書類の備置 株主総会の2週間前から 株主総会の2週間前から
事後開示書類の備置 効力発生日の6ヶ月後まで 効力発生日の6ヶ月後まで
株主通知 効力発生日の20日前まで 効力発生日の20日前まで
反対株主株式買取請求権 効力発生日の20日前から前日まで。株主総会までに反対通知を行い、株主総会でも反対票を投じることが必要。 効力発生日の20日前から前日まで。株主総会までに反対通知を行い、株主総会でも反対票を投じることが必要。
価格決定申立 効力発生日から30日以降60日以内 効力発生日から30日以降60日以内
債権者保護手続 不要 不要
差止請求 可能 可能
株券提出手続(株券発行時) 通知必要 通知必要
買収会社の課税 ー ー
対象会社の課税 原則として非適格株式交換となるが、直前に3分の2以上を保有する場合は適格となり得る(下記参照) ー
一般少数株主(賛成株主)

の課税

譲渡益課税(買収会社への譲渡である) 譲渡益課税(対象会社への譲渡であるがみなし配当課税の適用除外)
敵対的少数株主(反対株主)

の課税

みなし配当課税(対象会社への譲渡である)

※法人は受取配当等の益金不算入?

譲渡益課税(対象会社への譲渡であるがみなし配当課税の適用除外)

※課税関係は未確認ですので税理士先生にご確認ください。

⇒少数株主の排除(スクイーズアウト)の方法を見る!

組織再編税制上の取扱いに関する留意(平成29年度税制改正)

上表のうち対象会社の課税につきましては、平成29年度税制改正による見直しを踏まえる必要があります。

第一に、同改正により、株式併合のうち併合後に法人株主との間に完全支配関係を有することとなるもの、全部取得条項付種類株式の端数処理及び特別支配株主の株式等売渡請求が、「株式交換等」として組織再編税制の対象に取り込まれました。

第二に、現金を対価とする株式交換につきましては、従前は金銭等不交付要件を満たさないため一律に非適格とされておりましたが、同改正により、株式交換完全親法人が株式交換の直前に株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を有する場合において、それ以外の株主に交付される金銭等は、適格判定上の金銭等不交付要件の判定から除外されることとなりました。したがって、既に3分の2以上を保有している局面では、現金を対価とする株式交換であっても適格となり得ます。

実際の課税関係は、保有割合、支配関係の継続の見込み、対価の内容等により異なりますので、具体的な事案においては必ず税理士にご確認ください。

株式の併合による場合の手続の流れ

株式の併合は、現在の実務において少数株主の排除の手法として最も多く用いられているものです。少数株主の持株が1株に満たない端数となるように併合の割合を設計し、生じた端数を金銭によって処理することによって、結果として株主構成を整理いたします。手続の骨格は次のとおりです。

第1 株主総会の特別決議

会社法第180条第2項により、株式の併合をしようとするときは、株主総会の決議によって、併合の割合、効力発生日、種類株式発行会社にあっては併合する株式の種類、及び効力発生日における発行可能株式総数を定めます。この決議は会社法第309条第2項第4号の特別決議です。したがって、会社の側が議決権の3分の2以上を確保できることが、この手法を採る前提となります。なお、公開会社においては、効力発生日における発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の4倍を超えることができません。

第2 事前の開示と株主への通知

会社法第182条の2により、会社は、効力発生日の2週間前の日又は会社法第181条第1項の通知若しくは公告の日のいずれか早い日から、効力発生日の後6箇月を経過する日までの間、併合の割合の相当性に関する事項その他の法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置かなければなりません。また、会社法第181条第1項により、効力発生日の2週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、併合する株式の種類及び併合の割合を通知し、又は公告いたします。

第3 反対株主の株式買取請求

会社法第182条の4により、株式の併合により1株に満たない端数となるものが生ずる場合には、反対株主は、会社に対し、端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができます。請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に行われます。価格について協議が調わないときは、会社法第182条の5により、効力発生日から30日以内の期間の満了の日の後30日以内に、裁判所に対して価格の決定の申立てをすることができます。

第4 効力の発生と端数の処理

効力発生日に株式の併合の効力が生じ、少数株主の持株は1株に満たない端数となります。会社法第235条第1項により、端数の合計数に相当する数の株式を競売し、その代金を端数に応じて交付いたします。もっとも、非上場の株式には市場価格がありませんので、同条第2項が準用する会社法第234条第2項により、裁判所の許可を得て競売以外の方法によって売却することになります。会社自身が買い取ることも、同条第4項の準用により可能です。

第5 事後の開示と登記

会社法第182条の6により、会社は、効力発生日の後遅滞なく、株式の併合が効力を生じた時における発行済株式の総数その他の事項を記載した書面又は電磁的記録を作成し、効力発生日から6箇月間、本店に備え置かなければなりません。あわせて、発行済株式の総数及び発行可能株式総数の変更の登記を申請いたします。

現金を対価とする株式交換による場合の手続の流れ

現金を対価とする株式交換は、対象となる会社の株式の全部を、別の会社が取得し、その対価として少数株主に金銭を交付する手法です。端数を生じさせるのではなく、株式そのものを移転させる点で、株式の併合とは構造が異なります。

第1 完全親会社となる会社の準備

会社法第767条により、株式交換は、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることによって行われます。したがって、既に完全親会社となるべき会社が存在するか、あるいは資産管理会社を新たに設立するといった準備が必要です。この点が、会社単独で完結する株式の併合との最大の相違です。

第2 株式交換契約の締結

会社法第768条第1項により、株式交換契約においては、完全親会社及び完全子会社の商号及び住所、対価に関する事項、対価の割当てに関する事項、効力発生日等を定めます。同項第2号ホにより、対価を金銭とすることが認められており、これがいわゆる現金対価の株式交換です。

第3 株主総会の特別決議

完全子会社となる会社においては、会社法第783条第1項により、効力発生日の前日までに株主総会の決議によって株式交換契約の承認を受けなければならず、この決議は会社法第309条第2項第12号の特別決議です。完全親会社となる会社の側でも、会社法第795条第1項により原則として承認の決議を要しますが、会社法第796条第2項の要件を満たす場合には、いわゆる簡易な手続により決議を省略し得ます。また、完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する特別支配会社である場合には、会社法第784条第1項により完全子会社の側の決議を省略し得ます。

第4 反対株主の株式買取請求と差止め

会社法第785条により、完全子会社となる会社の反対株主は、公正な価格での買取りを請求することができ、協議が調わないときは会社法第786条により裁判所に価格の決定を申し立てることができます。また、株式交換が法令又は定款に違反する場合において株主が不利益を受けるおそれがあるときは、会社法第784条の2により、株式交換をやめることを請求することができます。

第5 効力の発生と、無効の訴えの期間

効力発生日に完全親会社が完全子会社の株式の全部を取得し、少数株主には金銭が交付されます。手続に瑕疵があった場合、会社法第828条第1項第11号により株式交換の無効の訴えが認められますが、その出訴の期間は効力が生じた日から6箇月以内です。この6箇月を経過すれば、法律関係は安定いたします。

どちらの手法を選ぶかの判断

2つの手法は、いずれも少数株主を金銭によって退出させるという結果においては共通いたします。もっとも、会社の置かれた状況によって、選ぶべきものは明確に分かれます。

受皿となる会社があるかどうか

現金を対価とする株式交換は、完全親会社となる会社の存在を前提といたします。既に持株会社の体制を採っている企業集団や、経営者が資産管理会社を保有している場合には、この手法が自然です。逆に、単体の事業会社が単独で少数株主を整理しようとする場面では、受皿の会社を新たに設立する負担が重く、株式の併合の方が簡明です。

資金の負担をどこに置くか

株式の併合による場合、端数の処理の代金は、会社が自ら買い取るのであれば会社の資金から支出されます。他方、現金を対価とする株式交換による場合、対価は完全親会社となる会社が支払います。すなわち、資金の負担の主体を対象会社の外に置くことができます。対象会社の手元資金が乏しい場合や、分配可能額の制約を避けたい場合には、この相違が決定的な意味を持ちます。

手続の重さと日程

株式の併合は、株主総会の決議が1つで足り、契約の締結も要しません。他方、現金を対価とする株式交換は、契約の締結、双方の会社における手続、債権者の保護に関する検討といった工程が加わります。日程の見通しは、株式の併合の方が立てやすいのが実情です。

争いの見通し

いずれの手法によっても、少数株主は価格を争うことができます。株式の併合であれば会社法第182条の5、現金を対価とする株式交換であれば会社法第786条が、それぞれ価格の決定の手続を定めています。したがって、手法の選択によって価格の争いを避けることはできません。避けられない以上、いずれを選ぶにせよ、対価の算定と手続の記録を訴訟に耐える水準で整えておくことが必要です。

対価の額をどのように定めるか

実務において最も多くの紛争を生むのは、手続の細目ではなく、少数株主に交付される金銭の額です。非上場の株式には市場価格が存在しませんので、算定の手法とその過程が争われます。

複数の手法による算定を突き合わせます

純資産の額を基礎とする方法、収益力を基礎とする方法、類似する会社の指標を用いる方法のいずれか一つのみによる算定では、説得力を欠きます。複数の手法によって算定を行い、それぞれの数値の開きがどのような要因によるものかを説明できる状態にしておく必要があります。とりわけ、土地、有価証券、保険積立金の含み損益、及び役員退職慰労金の引当ての状況は、非上場の同族の会社において数値を大きく左右する項目です。

手続の公正さが価格の相当性を支えます

支配株主と少数株主との利益が相反する場面においては、算定の数値そのものよりも、その数値がどのような過程を経て定められたかが重視されます。独立した第三者による評価を取得したこと、利害関係を有する取締役が審議及び決議に加わっていないこと、取締役会の審議の内容が議事録に記録されていることは、いずれも会社の側の立場を支える事情となります。

税務上の取扱いは必ず個別に確認いたします

交付される金銭が株式の譲渡による所得として扱われるか、配当とみなされる部分が生ずるかは、手法及び処理の方法によって異なります。また、法人の株主が含まれる場合には、その株主の側の課税関係も問題となります。適用関係は個別の事情により異なりますので、具体的な事案においては必ず税理士にご確認ください。

よくあるご質問

いずれの手法を選ぶべきかという場面で、会社の側から寄せられることの多いご質問と、その考え方を整理いたします。個別の事情により結論が変わり得るものが含まれますので、実際のご判断にあたっては個別にご相談ください。

持株の比率が3分の2に達していない場合はどうすればよいですか

いずれの手法も直ちには用いることができません。先に任意の買取りによって持株の比率を引き上げる作業が必要です。要件を満たさないまま総会に議案を諮りますと、会社の意図が明らかになったうえで手法だけを失う結果を招きます。

持株の比率が10分の9以上ある場合はどちらを選ぶべきですか

この場合には、会社法第179条の特別支配株主の株式等売渡請求という第3の手法を用いることができます。株主総会の決議を要しませんので、手続の負担は最も軽くなります。10分の9以上を確保できているのであれば、まずこの手法を検討されるのがよいものと考えます。

少数株主の同意を得る必要はありますか

いずれの手法についても、個々の少数株主の同意は要件ではありません。もっとも、同意を得ないまま進める以上、価格に対する不服が買取請求及び価格の決定の申立てという形で現れることを前提とした準備が不可欠です。

手続に要する期間はどのくらいですか

株主名簿及び定款の点検、株価の算定、株主総会の準備、法定の通知及び開示の期間、端数の処理の許可の申立てを順に積み上げますと、着手から完了まで数箇月を要することが通常です。日程を詰めて組むことは、差止めの請求を受けた場合の対応の余地を失わせますので、余裕を持った計画をお勧めいたします。

まとめ

少数株主の排除の手法として、株式の併合と現金を対価とする株式交換は、いずれも金銭による退出という結果において共通いたします。相違は、受皿となる会社を要するかどうか、資金の負担をどこに置くか、そして手続の重さにあります。単体の事業会社が単独で株主構成を整理する場面では株式の併合が、持株会社の体制の下で企業集団の再編と併せて行う場面では現金を対価とする株式交換が、それぞれ自然な選択となります。

いずれの手法を選ぶにせよ、会社の側が備えるべきものは共通しています。第1に、株主名簿と定款を実体に合わせて整えること。第2に、議決権の数を1株単位で確定させ、決議の成立の見通しを立てること。第3に、対価の算定について独立した評価を取得し、取締役会の審議の過程を記録に残すこと。第4に、法定の通知及び開示の期間を日程表の上に明示して確実に履行することです。

この4点が満たされている限り、少数株主から価格の決定の申立てを受けたとしても、会社の側の立場は堅固です。手法の巧拙よりも、準備の周到さが結果を左右いたします。着手をお考えの段階で、現に効力を有する定款、株主名簿、直近の計算書類をお手元にご用意のうえ、ご相談いただければと存じます。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。

執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

平成23年に最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得た弁護士であります。長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件にも関与しております。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

所在地 〒105-6017 東京都港区虎ノ門4丁目3番1号 森トラスト城山トラストタワー17階/電話番号 03-6435-8418/受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。