所在不明株主の株式集約方法!

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所在不明株主の株式の集約に関するメインのページです。本ページは、発行会社の側から、五年の要件を満たして競売又は売却により整理する制度をご説明します。株主名簿の点検は別のページをご参照ください。

▶ 株主名簿が古い会社がまず確認すべきこと

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本記事は、株主名簿上の株主と連絡が取れず、M&Aや事業承継に向けてその株式を整理したいと考えている会社の経営者の方に向けたものです。

株主に対する通知が5年以上継続して到達せず、かつ5年間継続して配当を受領していない場合には、会社は、公告と催告、取締役全員の同意を経て裁判所の許可を得ることにより、その株式を買い取ることができます。経営承継円滑化法の特例により期間を1年に短縮できる場合もあります。以下、順にご説明します。

会社の歴史が長くなってくると、「株主の所在が不明である」「株主と連絡が取れない」など、所在不明株主の問題が噴出することがあります。

株主の地位というのは、仮に連絡が取れないからといって自動的に喪失するものではなく、また、所在のわからない株主の株式を会社が勝手に処分することもできません。

しかし、だからといって放置しておけば、大きなトラブルの原因となってしまう可能性もあります。

たとえば、M&Aが行われる場合、買収者は対象会社の株式の100%を取得したいと考えるのが通常です。

また、会社の株式をすべて第三者に譲渡し、事業承継を行う場合も同様です。

仮に会社の株式を99%取得したとしても、残りの1%の株主のために会社は正式に株主総会の招集手続をとる必要が出てきてしまいますし、総会等で権利行使をされる可能性もでてくるため、株式の100%を取得したいと考えます。

所在不明株主がM&Aや事業継承などを妨げてしまうリスクがあるため、放置しておくと非常に危険です。

そこでこの記事では、所在不明株主の株式集約方法についてM&A弁護士が徹底解説していきます。

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所在不明株式とは?

『所在不明株式』とは、株主名簿に記録された住所に宛てて発した通知、または催告が5年以上継続して到達せず、尚且つ継続して5年間剰余金の配当を受領していない株主のことをいいます。

所在不明株主は会社にとって管理のコストがかかってくるものであり、尚且つ株主総会の定足数確保に支障をきたしてしまう恐れがあるなど、様々なデメリットを生んでしまいます。

所在不明株主の株式集約方法

所在不明株式は会社が強制的に買い取る手段として、会社法第197条により、「所在不明株主の株式売却制度」が定められています。

よって、一定の要件を満たしているならば、所在不明株主であったとしても当該株式を買い取ることが可能となります。

所在不明株主の要件とは?

実は、以前までは所在不明株式を会社が勝手に売却することは不可能でした。

しかし、現在では以下の2つの要件を満たしている場合に限り、株式売却制度を利用して株式を強制的に買い取ることが可能となっています。

所在不明株主の要件

株主に対し5年以上継続して通知や催告が到達していないこと

要件の一つには、株主に対し、5年以上継続して通知や催告が到達していないことがあります。

ですが、実はこの通知に関しては、具体例が法律上明らかになっていません。

通知の典型例としましては、たとえば株主総会の招集通知や、会社から株主に送付したその他の書面(例えば株主総会後の決議通知等)などが挙げられます。

ただし、会社からの送付物が全て該当するというわけでは決してなく、あくまで会社と株主の関係性を前提にしたものであることが必要です。

これらが、5年以上継続して株主に一度も受け取られていないことが条件となります。

5年以上継続して剰余金の配当が受領されていないこと

その株主が、5年間継続して会社からの配当を受領していないことが要件の一つとなります。(会社からの配当が5年間なかった場合もこれに含まれます。)

また、いわゆる無配の株式会社であったとしても、この制度を利用することは可能です。

株主総会を開いてこなかった会社は原則として5年間の準備が必要(経営承継円滑化法の特例により1年に短縮できる場合があります)

所在不明株主の要件の一つには、「株主に対し、5年以上継続して通知や催告が到達していないこと」があります。

よって、これまで株主総会を開催していなかったような会社、あるいは、これまで株主総会招集通知を所在不明株主に送付していなかった会社は、上記要件を満たすことが不可能となるため、株式売却制度を利用することができません。

もし、株式売却制度を利用する場合には、まず株主総会を開催し、そのための招集通知を作成して株主へ発送することが必要となります。

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通知が到達しない場合に会社が最初に確認すること

所在不明株主に関する手続は、5年間継続して通知又は催告が到達しなかったという事実を、会社が記録により示すことができるかどうかにより成否が分かれます。通知が返戻された段階で、次の順序により確認してください。

第1に、株主名簿に記載された住所と、その記載を最後に確認した日を特定します。株主名簿の記載は会社が通知を発する基準となりますので、更新の履歴が残っていない場合には、更新の有無それ自体が争点となります。名簿の改訂に関する稟議、株主からの住所変更の届出、配当金の支払いに関する記録を併せて保存してください。

第2に、返戻された通知そのものを保存します。封筒に付された郵便事業者の付箋(あて所に尋ねあたりません、転居先不明等)は、到達しなかったことを示す直接の資料です。開封せずに封筒のまま保存し、発送日、発送の方法、返戻日を一覧表に記録してください。事業年度ごとに1件ずつ積み重ねることにより、5年の要件の疎明が容易になります。

第3に、住民票の写し及び戸籍の附票による調査の可否を検討します。会社は、株主の権利の行使に関する事務を処理するために必要な場合に、住民基本台帳法及び戸籍法の定める手続により交付を請求できる場合があります。請求が認められない場合には、弁護士会を通じた照会その他の方法を検討します。

第4に、調査を尽くしたと評価されるための記録を整えます。通知の発送及び返戻の一覧、住所の調査の経過、電話その他の連絡の試行、他の株主又は親族からの聴取の内容を、日付とともに1つの書面にまとめる方法が有用です。競売又は売却の許可の申立てにおいては、この書面が疎明の中核となります。

なお、所在が判明しない状態が続いていることを理由として、通知の発送それ自体を取りやめることは避けてください。発送を中断した事業年度が生じますと、5年間継続したという要件の主張が難しくなります。

所在不明株主の株式売却制度のメリット

所在不明株主の株式売却制度の最大のメリットは、裁判所の許可を得ることで、所在不明株主の株式を鑑定価格等で強制的に買い取ることが可能となる点にあります。

また、この制度を利用することにより、所在不明株主は株主ではなくなります。

所在不明株主の株式売却制度の手続

ここでは、所在不明株主の株式売却制度の手続の流れを解説していきます。

所在不明株主の株式売却制度の手続の流れ

官報公告・個別催告

まずは「公告」と「催告」の手続を行います。

公告とは、官報への掲載や新聞への掲載、あるいはインターネットへの掲載などの方法で、ある事項を広く一般に知らせることです。

所在不明株主の株式を株式売却制度で集約するためには、法律上、所在不明株主に株式売却についての異議を述べる機会を与えるために、「公告」を行うことが義務付けられています。

催告とは、相手方に対して一定の行為を請求することです。

所在不明株主の株式売却制度を利用する場合、公告とは別に、所在不明株主への個別の通知を行うことも義務付けられています。

また、催告は株主名簿に記載された所在不明株主の住所に宛てて通知することに意義があるため、もし実際に届かなかった場合でも、通常届くべき時期に届いたものとみなされます。(会社法第126条)

取締役全員の同意により株式売却許可申立を行う

官報公告や個別催告により異議がでなければ、裁判所へ株式売却許可申立を行います。(裁判所への申し立ての際には株価鑑定書の提出が必要)

また、その株式を発行した会社に取締役が2名以上いる場合には、取締役全員の同意が求められます。

申立てに必要となる疎明資料は以下の通りです。

○履歴事項全部証明書

○株主名簿

○5年間分の株主総会招集通知書及び返戻封筒

○5年間分の剰余金配当送金通知書及び返戻封筒

○取締役会議事録(取締役会設置会社で会社が株を買い取る場合に必要)

○買受書(当該株式会社以外の者が買い取る場合に必要)

○官報(公告)

○催告書及び発出したことが判る資料

○株価鑑定書

○全取締役の同意書(取締役が2名以上いる場合に必要)

裁判所から売却許可決定がでれば会社が株式を買い取る

裁判所から許可決定がでれば、会社は所在不明株主の株式を買い取ることが可能となります。

株式買取代金を法務局に供託する

通常、裁判所の許可を得て売却した際の売却代金は、買受会社等から株主に支払われなくてはなりません。

しかし、所在不明株主は支払先がわからず、受領しないことは明らかであるため、この場合法務局に代金を預けること(供託)が認められています。

また、供託しないという方法もありますが、その場合買受会社等は当該株主が現れるまで売却代金を管理する必要がでてきます。

もし、後日に当該株主が現れた場合、当該株主は供託所に還付請求をすることが可能です。

競売又は売却の許可の申立ての実務

所在の不明な株主の株式について要件を満たす場合、会社は、その株式を競売し、又は裁判所の許可を得て競売以外の方法により売却することができます。実務においては、競売ではなく、裁判所の許可を得て会社又は代表者が買い取る方法が用いられることが一般的です。

工程内容留意点
第1 要件の充足の確認通知又は催告が5年以上継続して到達していないこと、及び剰余金の配当が5年以上継続して受領されていないこと株主総会の招集の通知を発していない会社は、この要件を満たすまでに期間を要します
第2 調査住所の調査、戸籍及び住民票の取得、相続人の有無の確認調査を尽くしたことの記録を残します
第3 公告及び通知売却する旨、その株式の株主に異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、各別に通知いたします異議の申述の期間は3か月を下ることができません
第4 裁判所への申立て競売以外の方法による売却の許可、及び会社が買い取る場合にはその許可を申し立てます価格の疎明資料を要します
第5 売却及び代金の管理売却により得られた代金を、当該株主のために管理いたします供託により処理する場合があります

5年の要件を満たさない場合の代替

要件を満たさない場合には、まず、株主総会の招集の通知を毎年発することにより、到達しない状態を記録として積み上げることになります。これと並行して、相続人の調査を行い、承継人が判明した場合には任意の買取りを打診いたします。また、株式の併合による整理が可能であれば、所在の不明な株主を含めて一括して整理することができますので、こちらを選択する方が早い場合があります。

整理を進めるべき時期

所在の不明な株主は、時の経過とともに相続が重なり、権利者の数が増加いたします。関係者が増えるほど、調査に要する期間と費用は増大いたします。事業承継又は会社の譲渡の予定がなくとも、把握した時点で整理に着手されることをお勧めいたします。

経営承継円滑化法による会社法の特例(5年が1年に短縮されます)

前記のとおり、会社法第197条の制度は、5年以上継続して通知又は催告が到達せず、かつ5年間継続して剰余金の配当を受領していないことを要件としております。もっとも、事業承継の局面では、5年の経過を待つ余裕がないことが少なくありません。

そこで、令和3年8月2日に施行された中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)の会社法特例により、都道府県知事の認定を受けた中小企業者については、この「5年」が「1年」に短縮されることとなりました。

認定の要件

認定を受けるためには、次の二つの要件を満たす必要があります。

第一に、経営困難要件です。代表者が年齢、健康状態その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため、会社の事業活動の継続に支障が生じている場合であることを要します。

第二に、円滑承継困難要件です。株主の所在が不明であることにより、その経営を当該代表者以外の者に円滑に承継させることが困難であることを要します。

認定の手続

認定権者は、申請者である中小企業者の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事です。認定を受けた後に、会社法第197条に基づく競売又は売却の手続を行うこととなります。

実務上の留意点

本特例は、要件を満たす限りにおいて、5年の経過を待たずに所在不明株主の株式を集約することを可能とするものですので、事業承継やM&Aを控えた会社にとって極めて有用です。他方、認定の申請には代表者の状況及び承継が困難であることを裏付ける資料の準備を要し、認定を得るまでに一定の期間を要します。したがって、株式の集約を要する事情が判明した段階で、早期に検討を開始することが望まれます。

なお、本特例は「5年」を「1年」に短縮するものであり、通知又は催告が到達していないこと及び剰余金の配当を受領していないことという要件そのものを不要とするものではありません。この点は誤解が生じやすいところですので、ご留意ください。

根拠 中小企業庁「経営承継円滑化法 所在不明株主に関する会社法の特例」、令和3年8月2日施行

まとめ

所在不明株式は、正に百害あって一理なしです。

放置しておけば突然所在不明株主が現れ、会社の重要な事項に反対する議決権の行使をされてしまうかもしれませんし、M&Aや事業継承などの妨げになってしまう可能性もあります。

また、所在不明株主の株式売却制度を利用すれば株式を集約することもできますが、この場合株主総会を開き、5年間継続して株主へ通知を行っている必要があります。

よって、今現在通知を行っていない場合には、株主総会を開き、株主へ通知をするなどの対処が早急に必要となります。

そもそも、所在不明株主の株式売却制度を利用する以前の問題として、株主の管理が十分に行われていない会社も多いです。(たとえば、株主名簿が備え置かれていないなど)

そのような会社は、所在不明株主を出さないよう株主名簿の調製から行っていく必要があります。

そしてこの場合、おすすめとなるのが法のプロである弁護士へ相談してみることです。

弁護士へ相談すれば、株主名簿の調製から株主総会招集通知の作成、株主総会の指導、所在不明株主の株式売却制度のスケジューリングなど、幅広くサポートを受けることができます。

もし、今現在所在不明株主で悩んでいる場合は、できるだけ早く問題を解決するためにも弁護士の利用をご検討下さい。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

平成23年に最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得た弁護士であります。長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件にも関与しております。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。