譲渡制限株式の買取りで必要となる供託とは

譲渡制限株式について会社又は指定買取人が買い取ることになったが、供託という手続が必要だと言われ、何のために必要なのか分からないという非上場会社の経営者の方から、御相談をいただくことがあります。

この場面で問題となるのは、供託をしたことを証する書面を請求者に交付しなければ買取りの通知としての効力が問題となり得るという点であり、供託を欠いたまま手続を進めてしまうと、後に通知自体の有効性が争われる危険があるという点です。

以下では、供託が果たす意味、及び供託を行う主体を御説明します。

株主の側から見た意味 代金の支払を受けられる見込みが確保されます
会社の側から見た意味 買取りの通知を行うための要件となります
手続上の位置付け 供託をしたことを証する書面を請求者に交付する必要があります
欠いた場合 買取りの通知の効力が問題となり得ます

 供託の主体

供託を行うのは、買取りの主体となる者です。会社が買い取る場合には会社が、指定買取人が買い取る場合には当該指定買取人が行います。

指定買取人が個人である場合、その個人が資金を用意する必要があります。この点は、指定の前に確認しておくべき事項です。

要件と論点

 金額の算定

供託すべき金額は、制度上の算式に沿って算定されます。算定の基礎となる数値は、会社の計算書類に基づくものとなります。

会社側としては、算定の基礎となる数値を、直近の計算書類から正確に把握しておく必要があります。数値の誤りは、供託の額の不足につながり、手続の要件を欠く結果を招きます。

表2 算定にあたって確認する資料

資料 確認する内容
直近の計算書類 算定の基礎となる数値
株主名簿 対象となる株式の数
登記事項証明書 発行済株式の総数、株式の種類
定款 種類株式の有無、その内容
過去の議事録 剰余金の配当その他の決議の内容

なお、具体的な算式と数値については、貴社の状況を確認したうえでご説明いたします。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めにご確認いただくことをお勧めします。

 供託の期限

供託は、買取りの通知に先立って、又はこれと併せて行う必要があります。買取りの通知そのものにも期間が定められていますので、供託の準備は、その期間から逆算して進める必要があります。

資金の手当て、法務局における手続、証明書の取得には、それぞれ時間を要します。期限に追われた状態で着手することは避けてください。

 供託の場所と方法

供託は法務局において行います。管轄、必要となる書類、手続の方法については、事前に確認する必要があります。

法人が供託を行う場合には、代表者の資格を証する書面その他の書類が必要となります。これらの取得にも時間を要しますので、早期に準備を開始してください。

 供託した金額と最終的な代金との関係

供託した金額は、最終的な代金の額そのものではありません。代金は、当事者間の協議又は裁判所の手続によって定まります。供託した金額と代金の額とが異なる場合の処理についても、あらかじめ確認しておく必要があります。

 証明書の交付

供託をしたことを証する書面を請求者に交付する必要があります。交付の方法と時期についても、期間との関係で確認が必要です。

会社側の実務

表3 供託に向けた準備の手順

順序 行うこと
第1 買取りの主体を確定します
第2 供託すべき金額の算定の基礎となる数値を確認します
第3 金額を算定します
第4 資金の手当てを行います
第5 管轄の法務局と必要書類を確認します
第6 供託を行い、証明書を取得します
第7 買取りの通知と併せて、証明書を請求者に交付します
第8 すべての日付と記録を保存します

 資金の手当てを最初に確認します

供託には現実の資金が必要です。会社が買い取る場合には、資金繰りへの影響を確認してください。指定買取人が買い取る場合には、その者の資金を確認してください。

資金の手当てができないまま不承認の判断のみを進めると、手続が滞ります。

 算定の基礎となる数値の確認

算定の基礎となる数値は、計算書類に基づきます。決算の時期との関係で、どの期の計算書類によるかを確認してください。

 法務局における手続の確認

法人による供託には、複数の書類が必要となります。書類の不備により手続が遅れることを避けるため、事前に確認したうえで着手してください。

 社内での役割分担を定めます

供託の準備には、経理部門による資金の手当て、法務部門による書類の整備、代表者による決裁が並行して必要となります。誰がいつまでに何を行うかを、あらかじめ書面で定めておくことが有用です。

とりわけ、期間が限られている場面では、決裁の遅れが手続全体の遅延につながります。決裁の経路をあらかじめ短縮しておくことも検討してください。

 記録の整備

供託の日、金額、証明書の交付の日と方法は、すべて記録として保存してください。後日、手続の適正が争われた場合に、これらの記録が意味を持ちます。あわせて、算定の根拠とした計算書類、算定の過程を示す書面も保存してください。

関連する手続

供託と買取りの通知を行った後は、価格の協議へと進みます。協議が調わない場合には、裁判所に価格の決定を求める手続が用意されています。この申立てにも期間が定められています。

また、供託した金額の払渡しの手続についても、代金が確定した後の処理として確認が必要となります。

弁護士に相談する意味

第一に、供託は買取りの手続の要件として位置付けられるものであり、これを欠いた場合には手続の効力が問題となり得ます。要否と方法の確認は、実行の前に行う必要があります。

第二に、金額の算定です。算定の基礎となる数値の把握には、計算書類の確認が必要です。誤りは手続の瑕疵につながります。

第三に、期限の管理です。買取りの通知の期間から逆算して、資金の手当て、法務局における手続、証明書の取得の時期を計画する必要があります。

第四に、その後の手続の見通しです。供託した金額と最終的な代金との関係、価格の協議、裁判所の手続を含めた全体の見通しを立てたうえで進める必要があります。

当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立ってご依頼をお受けしております。ご相談は事前予約制です。

よくある質問

質問1 供託をしないまま買取りの通知をした場合、どうなりますか。

制度上の要件を欠くことになり、買取りの通知の効力が問題となり得ます。実行の前にご確認ください。

質問2 供託した金額が、最終的な代金となるのですか。

供託した金額は、最終的な代金の額そのものではありません。代金は、当事者間の協議又は裁判所の手続によって定まります。

質問3 供託の資金を会社が用意し、指定買取人の名義で供託することはできますか。

資金の出所については、後日問題とされることがあります。指定買取人が個人として買い取るという構成との整合が問われますので、判断の前にご相談ください。

質問4 供託の手続にはどのくらいの期間がかかりますか。

必要書類の準備の状況によって異なります。法人の場合、代表者の資格を証する書面その他の取得に時間を要しますので、早期の着手をお勧めいたします。

質問5 相談の際には何を持参すればよいですか。

受領した請求書の原本又は写し、定款、登記事項証明書、株主名簿、直近3期分の計算書類、資金繰りが分かる資料、指定買取人を検討している場合はその者の資力が分かる資料をご持参ください。

関連するご案内

株式譲渡を不承認とし、買取りの手続を進める会社の方は、株式譲渡承認請求を受けた会社へをご覧ください。受領直後の確認、承認機関の決議、承認しない場合の買取り、価格の協議までを、会社側の立場から整理してご案内しております。ご相談は事前予約制です。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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