株式譲渡承認請求の期限を過ぎるとどうなるか

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本ページは、株式譲渡承認請求への対応に関する解説のうち、「株式譲渡承認請求の期限を過ぎるとどうなるか」という論点を扱うページです。株式譲渡承認請求への対応の全体像は、次の中核となるページを御覧ください。

▶ 株式譲渡承認請求を受けた会社の対応

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株主から株式譲渡承認請求を受けたものの、対応に追われるうちに定款や会社法で定められた期間を過ぎてしまいそうだという非上場会社の経営者の方から、御相談をいただくことがあります。

この場面で問題となるのは、期間内に何らの通知もしなかった場合、承認をしたものとみなされ、会社の意図にかかわらず譲受人が株主として扱われてしまうという点です。

以下では、期間内の対応の内容ごとに生じる効果、及び定款による別段の定めの有無を確認する必要性を御説明します。

期間内に承認する旨を通知した場合 譲受人が株主となります
期間内に承認しない旨を通知した場合 会社又は指定買取人が買い取る段階へ進みます
期間内に通知をしなかった場合 承認をしたものとみなされ、譲受人が株主となります

 定款による別段の定め

期間について、定款に別段の定めが置かれている場合があります。したがって、一般的な数値のみを前提として判断することは適切ではありません。貴社の定款を確認してください。

例外及び注意点

 買取りの通知にも期間があります

承認をしない旨を通知した場合であっても、その後の買取りの通知について、別に期間が定められています。この期間を徒過した場合にも、会社にとって不利な効果が生じ得ます。

すなわち、期間の管理は一度で終わるものではありません。手続の各段階について、期間を確認する必要があります。

 通知の到達が問題となります

期間内に決定を行ったとしても、通知が期間内に到達しなければ意味を持たない場合があります。通知の方法は、到達の日を確認できるものを選んでください。

 期間を徒過してしまった場合

既に期間を徒過してしまった場合であっても、対応を検討する余地がある場合があります。徒過の事情、請求の要件の充足の有無、その後の当事者間のやり取りの内容によって、検討すべき事項が異なります。

もっとも、期間を徒過したという事実そのものを覆すことは容易ではありません。まずは事実関係を正確に把握し、早期に御相談ください。

 社内の体制の問題として捉えてください

期間の徒過は、多くの場合、制度の理解の不足ではなく、社内の処理の体制に原因があります。請求書が誰に届き、誰が処理するかが定まっていない、担当者の異動により引継ぎがなされていない、という事情です。

同種の書面が再度届く可能性がありますので、社内の受付と処理の体制を整えてください。

次に確認すること

表2 確認の順序

順序 行うこと
第1 請求書がいつ、どのような方法で到達したかを確認します
第2 定款を確認し、承認機関と期間に関する定めを特定します
第3 会社が対応すべき期間を確定します。手続によっては期間の定めが置かれている場合があります。その有無と起算点は、受け取った書面の内容や事実関係により異なりますので、早めに御確認いただくことをお勧めします
第4 社内での処理の経緯を時系列で整理します
第5 請求者との間のその後のやり取りの有無と内容を確認します
第6 対応の方針を検討します。決定の前に弁護士へ御相談ください

みなし承認が生ずる場合を条文により確認いたします

期限を徒過した場合の効果は、会社法第145条に定められています。同条は、次に掲げる場合には、会社は承認をする旨の決定をしたものとみなす旨を定めています。ただし、会社と譲渡等承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときは、この限りではありません。会社の側は、この但書の存在も併せて理解しておく必要があります。

第1号 2週間以内に決定の内容を通知しなかった場合

会社が、会社法第136条又は第137条第1項の規定による請求の日から2週間以内に、会社法第139条第2項の規定による通知をしなかった場合です。この2週間は、定款によってこれを下回る期間を定めることができます。すなわち、定款に「1週間」と定められている会社では、期間は1週間となります。逆に、2週間を上回る期間を定款で定めることはできません。まず定款を確認していただく必要があるのは、このためです。

第2号 40日以内に買取りの通知をしなかった場合

会社が、会社法第139条第2項の規定による通知の日から40日以内に、会社法第141条第1項の規定による通知をしなかった場合です。ただし、指定買取人が、会社法第139条第2項の規定による通知の日から10日以内に、会社法第142条第1項の規定による通知をした場合は除かれます。すなわち、会社自身が買い取る道と、指定買取人が買い取る道とがあり、いずれかの通知が期間内にされていれば、みなし承認は生じません。この40日と10日という2つの期間が併存する構造が、実務における最大の落とし穴です。

第3号 法務省令で定める場合

前2号のほか、法務省令で定める場合にもみなし承認が生じます。会社の側としては、条文に列挙された期間のみを管理していれば足りるという理解では不十分であり、手続の各段階において要求される行為を漏れなく履行する姿勢が求められます。

承認を拒む決定をしただけでは足りません

取締役会において承認をしない旨の決定をしたとしても、それを譲渡等承認請求者に通知しなければ、第1号によりみなし承認が生じます。社内で決定をしたことと、相手方に通知が到達したこととは別のことです。この区別を怠り、議事録は作成したものの通知の発送が遅れたという理由でみなし承認が生じた例が、現に存在いたします。

供託の義務と、これを怠った場合の効果

会社又は指定買取人が買い取るという道を選ぶ場合、通知だけでは足りません。会社法は、資力を担保するために供託を義務付けています。この点の見落としも、実務においてしばしば見受けられます。

会社法第141条第2項の供託

会社が買い取る旨の通知をしようとするときは、1株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額を、本店の所在地の供託所に供託し、かつ、その供託を証する書面を譲渡等承認請求者に交付しなければなりません。すなわち、通知と供託証明書の交付とは一体の行為です。供託を伴わない通知は、会社法第141条第1項の通知としての効力を欠くものと解されますので、40日の期間の管理は、供託の手配までを含めて行う必要があります。

指定買取人の場合も同様です

会社法第142条第2項により、指定買取人が買い取る旨の通知をしようとするときも、同様に供託をし、供託を証する書面を交付しなければなりません。指定買取人となる者に資力がなければ、そもそもこの制度は機能いたしません。指定買取人を選定する際には、供託に要する資金を用意し得るかどうかを最初に確認していただく必要があります。

1株当たり純資産額の算定

供託すべき額の基礎となる1株当たり純資産額は、法務省令の定めるところにより算定いたします。この金額は、後に述べる売買価格そのものではありませんが、当事者が価格の決定を裁判所に申し立てなかった場合には、そのまま売買価格となります。したがって、算定を誤りますと、会社が意図しない価格で株式を取得することになりかねません。

売買価格の決定の申立てには20日の期間があります

買取りの通知をした後、会社と譲渡等承認請求者との間で、価格の交渉が始まります。ここにも短い期間の定めが置かれており、これを徒過した場合の効果は明確です。

会社法第144条第1項及び第2項

売買価格は、まず会社と譲渡等承認請求者との協議によって定めます。協議が調わない場合、会社又は譲渡等承認請求者は、会社法第141条第1項の通知があった日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができます。指定買取人が買い取る場合についても、会社法第144条第7項により同様の定めが準用されます。

20日以内に申立てをしなかった場合の帰結

会社法第144条第4項により、20日の期間内に申立てがないときは、1株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額をもって売買価格とするものとされています。すなわち、申立てをしなければ、供託の基礎とした金額がそのまま売買価格として確定いたします。会社の側にとってこの金額が有利であれば、あえて申立てをしないという判断があり得ます。逆に、この金額が実勢に照らして高すぎると考えるのであれば、20日以内に会社の側から申し立てなければなりません。相手方の出方を待っている間に20日が経過してしまうという失敗が、現に多く生じています。

会社の側から申し立てる判断

1株当たり純資産額は、帳簿上の数値を基礎とするものであり、収益力や事業の実態を反映するものではありません。含み損を抱える資産を保有している会社では、この金額が実勢を大きく上回ることがあります。買取りの通知をする段階で、1株当たり純資産額と、複数の手法による株価の算定結果とを突き合わせ、申立てをするかどうかの方針を先に決めておいていただく必要があります。

みなし承認が生じてしまった場合に会社が採り得ること

期間を徒過し、みなし承認が生じてしまった場合、その効果を覆すことは容易ではありません。もっとも、会社が採り得る手段が全く残されていないわけではありません。

まず事実関係を正確に確定いたします

請求書がいつ会社に到達したのか、通知をいつ発したのか、到達したのはいつかを、客観的な資料により確定いたします。配達の記録、受領の印、社内の回覧の記録がその資料となります。期間の計算において1日の相違が結論を分けますので、この確定作業を曖昧なまま進めてはなりません。

合意による別段の定めの有無を確認いたします

会社法第145条本文の但書により、会社と譲渡等承認請求をした者との合意により別段の定めをしたときは、みなし承認は生じません。請求の受領後に、当事者間で回答の期限について協議し、これを延長する旨の合意が成立していた場合には、その合意が効力を有します。書面のやり取りの中に、この合意と評価し得るものがないかを点検していただく必要があります。

承認された後の株主として扱ううえでの備え

みなし承認が生じた場合、譲受人は適法に株主となります。会社としては、これを前提として、その者との関係をどのように構築するかに切り替える必要があります。株主名簿の名義書換に応じ、株主総会の招集の通知を発し、株主として遇したうえで、任意の買取りの交渉、あるいは株式の併合その他の手法による整理を検討することになります。承認をしていないという立場に固執し、株主としての取扱いを拒み続けますと、株主総会の決議の効力を争われるなど、より大きな紛争を招きます。

株式買取業者が関与する場面での留意

近年、譲渡等承認請求の背後に株式買取業者が関与している例が増えています。この場合、期間の管理はより厳格に行う必要があります。

期間の徒過そのものが狙われています

株式買取業者は、会社法の期間の定めを熟知しています。年末年始、大型連休の直前、あるいは決算期の繁忙期を選んで請求書が届くことがあり、これは偶然ではないと考えるべき場面があります。請求書を受領した日から2週間という期間は、社内の意思決定と通知の発送とを完了させるには決して長くありません。到達の当日に日程表を作成し、取締役会の開催日を直ちに押さえていただく必要があります。

指定買取人をあらかじめ想定しておきます

会社が自ら買い取る場合には、株主総会の特別決議と分配可能額の制約が伴います。これに対し、指定買取人による買取りであれば、これらの制約を受けません。誰を指定買取人とするか、その者に供託の資金があるかを、請求を受けてから検討したのでは間に合いません。経営者、後継者、資産管理会社、取引先といった候補をあらかじめ想定し、資金の手当ての見通しを立てておくことが、実効性のある備えです。

相手方の真意を見極めます

譲渡等承認請求は、必ずしも実際に譲渡することを目的として行われるとは限りません。会社に買取りを迫るための手段として用いられることがあります。会社法第143条により、譲渡等承認請求者は、会社の承諾を得た場合に限り請求を撤回することができますので、請求がされた以上、手続は進行いたします。相手方の目的が何であれ、会社としては条文の定める期間を守るほかありません。目的の詮索よりも、日程の管理を優先していただく必要があります。

まとめ

株式譲渡承認請求における期限の管理は、会社にとって、判断の巧拙ではなく事務の正確さが問われる場面です。第1に、請求の日から2週間以内に承認をするか否かの決定の内容を通知すること。第2に、承認をしない場合には、その通知の日から40日以内に会社が買い取る旨の通知を、又は10日以内に指定買取人が買い取る旨の通知をすること。第3に、その通知に際して1株当たり純資産額に基づく供託をし、供託を証する書面を交付すること。第4に、価格に不服があるときは、通知の日から20日以内に裁判所に売買価格の決定を申し立てること。この4つの期限を守れば、会社の立場が期限の徒過によって損なわれることはありません。

逆に、いずれか1つを徒過しますと、会社が望まない相手方が株主となり、あるいは会社が望まない価格で株式を取得することになります。しかも、この効果は法律上当然に生ずるものであり、事情を説明して覆すことはできません。定款に定められた期間を確認し、請求書の到達の日を起算日として日程表を作成することが、最初にして最も重要な作業です。

株式譲渡承認請求の書面が届いた段階であれば、まだ十分に間に合います。届いた書面、現に効力を有する定款、株主名簿、直近の計算書類をお手元に御用意のうえ、直ちに御相談ください。

弁護士に相談する意味

第一に、期間の確定です。制度と定款の定めによって異なりますので、確認を経ずに判断することは適切ではありません。

第二に、徒過してしまった場合の検討です。事実関係の把握と、その後の対応の方針の検討には、経験を要します。

第三に、その後の株主としての対応です。譲受人が株主となることを前提として、想定される権利行使への備えを進める必要があります。

第四に、社内の体制の整備です。同種の書面が再度届く可能性がありますので、受付と処理の体制を定めておく必要があります。

当事務所は、発行会社、支配株主、代表取締役、法務責任者の側に立って御依頼をお受けしております。御相談は事前予約制です。

よくある御質問

質問1 社内の事情で遅れた場合でも、同じ扱いとなりますか。

社内の事情は、期間の徒過を正当化する理由とはなりにくいといえます。まずは事実関係を整理したうえで、対応を検討することになります。

質問2 承認したものとみなされた場合、名義書換に応じる必要がありますか。

承認をしたものとみなされる場合、譲受人が株主としての地位を取得することを前提とした対応が必要となります。名義書換の請求に対する具体的な対応については、状況を確認したうえで御説明いたします。

質問3 請求書に不備がある場合も、期間は進行しますか。

不備の内容によって取扱いが異なります。不備を理由として期間が進行しないと判断することには危険が伴いますので、判断の前に御相談ください。

質問4 電子メールで届いた請求はどう扱いますか。

到達の有無と時期の判断が問題となります。到達を認めるかどうかによって期間の起算が変わりますので、判断の前に御相談ください。

質問5 相談の際には何を持参すればよいですか。

受領した請求書の原本又は写しと封筒、定款、登記事項証明書、株主名簿、社内での処理の経緯が分かる資料、請求者との間のやり取りの記録を御持参ください。

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