譲渡制限株式の譲渡承認請求を受けた会社が弁護士に依頼するとき 2週間の期限と指定買取人の選定

この記事の位置付け

譲渡制限株式をめぐるご相談は、株主から譲渡の承認を求められて会社が応答する場面と、会社の側から株式を集約する場面とに分かれますので、本記事と関連するページとを次のとおり切り分けます。

本記事は、譲渡等承認請求を受け取った会社の側に限り、承認をするかどうかの決定、2週間の期限、指定買取人の選定、及び売買価格の決定の申立てへの備えを述べるページです。会社の側から株式を集約する場面、供託の実務、及び制度そのものの沿革は、次の各ページに集約しています。

▶ 少数株主対策を弁護士に依頼するとき 会社が相談すべき時期と、任せられる対応の範囲

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ある日、株主から1通の書面が届きます。「所有する株式を第三者に譲渡したいので、承認するかどうかを決定していただきたい。承認しない場合には、貴社又は貴社の指定する者において買い取ることを請求する。」という内容です。譲渡等承認請求と呼ばれるもので、会社法第136条及び第138条に根拠を持ちます。

本ページは、この書面を受け取った会社の側、すなわち発行会社の経営者及び担当者に向けて、何を、どの順序で、いつまでに決めなければならないかを整理したものです。株式を売却したい株主の側の進め方ではなく、請求を受けた会社の側の進め方を述べます。

結論から申し上げます。この書面が届いた時点で、会社には2週間という期限が始まっています。2週間以内に決定の内容を通知しなければ、会社は譲渡を承認したものとみなされます(会社法第145条第1号)。承認をしたくないと考えておられる会社にとって、これは最も避けたい結末です。到達の日を確かめることが、最初の作業です。

この記事の要点

第1に、承認をするかどうかの決定と通知は、請求の日から2週間以内です。期限を過ぎますと承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。

第2に、承認をしないと決めた場合、株主が買取りの請求を併せてしているときは、会社又は指定買取人が買い取らなければなりません(会社法第140条)。

第3に、会社が買い取る場合には財源規制がかかります(会社法第461条第1項第1号)。分配可能額が乏しい会社では、指定買取人の選定が実質的な選択肢となります。

第4に、価格は協議により定めますが、20日以内に裁判所へ売買価格の決定を申し立てる道が双方に開かれています(会社法第144条第2項)。

Contents
  1. 譲渡等承認請求が届いたら、最初に確かめる3つのこと
    1. 第1 到達の日はいつか
    2. 第2 買取りの請求が併せてされているか
    3. 第3 請求者は株主か、株式取得者か
  2. 承認をするかどうかを決める機関は、定款で決まります
    1. 請求をした株主は、議決権を行使することができません
  3. 2週間の期限 通知をしないと承認したものとみなされます
  4. 会社が採り得る3つの道と、その手続
    1. 会社が買い取る場合の財源規制
    2. 指定買取人の選定 誰を指定することができるのか
  5. 買取りの通知と供託
  6. 価格の協議と、売買価格の決定の申立てへの備え
    1. 申立てがないまま20日が過ぎた場合
    2. 裁判所が考慮する事情
  7. 実務で頻発する手続上の誤り
  8. 弁護士に依頼するとき、会社が任せられる範囲
    1. 第1 書面の法的性質の判定と、期限の確定
    2. 第2 定款及び登記の整合の確認と、決議の設計
    3. 第3 指定買取人の選定及び資金の手当ての助言
    4. 第4 通知書及び供託の手続の代行
    5. 第5 価格の協議及び売買価格の決定の申立てへの対応
    6. 第6 その後の少数株主対策への接続
  9. 承認をすると決めた場合に、会社が備えておくこと
    1. 第1 名義書換えと株主名簿の整備
    2. 第2 新たな株主に対する情報の提供の範囲の整理
    3. 第3 株式の分散そのものへの手当て
  10. いま確認していただきたいこと
  11. よくある御質問
    1. 承認をしたくないのですが、買い取る資金がありません
    2. 株主が買取りの請求を書いていません。どうすればよいですか
    3. 相手方が株式買取業者です。承認をしない扱いで問題ありませんか
    4. 2週間では株主総会を開くことができません
    5. 提示された価格が高すぎます。会社から争うことはできますか
    6. 一度承認をしてしまいました。取り消すことはできますか
  12. まとめ
  13. 出典

譲渡等承認請求が届いたら、最初に確かめる3つのこと

担当者が最初にすべきことは、決定の中身を考えることではありません。書面の性質と、期限の起算点とを確定することです。次の3点を、その日のうちに確かめてください。

第1 到達の日はいつか

会社は、譲渡等承認請求の日から2週間以内に、承認をするかどうかの決定の内容を通知しなければなりません(会社法第139条第2項、第145条第1号)。定款でこれを下回る期間を定めている会社もありますので、あわせて定款を御確認ください。封筒、配達証明、受領印の控えを、この段階で保存してください。

第2 買取りの請求が併せてされているか

譲渡等承認請求には、承認をしない場合に会社又は指定買取人が買い取ることを請求する旨が記載されていることがあります(会社法第138条第1号ハ)。この記載の有無により、会社の負担は根本から変わります。記載があれば、承認をしないと決めた場合に買取りの義務が生じます(会社法第140条第1項)。記載がなければ、承認をしないと決めるだけで手続は終わります。書面の全文を、この観点から読み直してください。

第3 請求者は株主か、株式取得者か

請求をすることができるのは、譲渡制限株式の株主(会社法第136条)と、譲渡制限株式を取得した株式取得者(会社法第137条第1項)です。後者の場合、原則として株主名簿に記載された株主と共同してしなければなりません(会社法第137条第2項)。共同の要件を欠く請求は、そもそも有効な請求ではありません。株主名簿と突き合わせて御確認ください。

承認をするかどうかを決める機関は、定款で決まります

承認をするかどうかの決定は、株主総会の決議によります。ただし、取締役会設置会社では取締役会の決議によります(会社法第139条第1項本文)。定款に別段の定めがあるときは、その定めによります(同項ただし書)。代表取締役の決定によると定めている会社もあります。

ここで実務上の落とし穴があります。登記事項証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」の欄と、現在の機関設計とが食い違っている会社が少なくありません。取締役会を廃止したのに登記の文言が「取締役会の承認を受けなければならない」のままである、といった例です。この場合、どの機関で決議すべきかが直ちには定まりません。決議の瑕疵は、後に譲渡の効力そのものを争われる原因となりますので、期限までに整理しておく必要があります。

請求をした株主は、議決権を行使することができません

会社が買い取る旨の決定を株主総会の特別決議でする場合、譲渡等承認請求をした株主は、原則としてその決議について議決権を行使することができません(会社法第140条第3項本文)。もっとも、当該株主以外の株主の全部が議決権を行使することができない場合は、この限りではありません(同項ただし書)。株主が2名しかいない会社では、この例外が働く場面があります。

2週間の期限 通知をしないと承認したものとみなされます

会社が、請求の日から2週間以内に決定の内容を通知しなかったときは、会社は譲渡を承認したものとみなされます(会社法第145条第1号)。この効果は、会社の意思とは関わりなく生じます。社内で意見が割れている、株主総会の日程が取れない、といった事情は考慮されません。

さらに、承認をしない旨の通知をした後も、期限は続きます。会社が承認をしない旨の通知の日から40日以内に買取りの通知をしなかったときも、承認をしたものとみなされます(会社法第145条第2号)。指定買取人が指定された場合の期間は、会社法第145条第2号の括弧書き及び第3号並びに会社法施行規則第26条の定めるところによります。

会社の側が最も多く失敗するのが、この2つのみなし承認です。期限を1日でも超えれば、会社が最も避けたかった第三者が株主となります。

会社が採り得る3つの道と、その手続

譲渡等承認請求を受けた会社が採り得る道は、次の3つです。

採り得る道 決定の機関 会社の負担
承認をする 株主総会又は取締役会(会社法第139条第1項) 資金の負担はありません。第三者が株主となります。
承認をせず、会社が買い取る 株主総会の特別決議(会社法第140条第2項、第309条第2項第1号) 供託と買取代金の資金が必要です。財源規制がかかります。
承認をせず、指定買取人を指定する 取締役会設置会社では取締役会の決議、その他の会社では株主総会の特別決議(会社法第140条第4項、第5項) 会社の資金は要しません。指定買取人の資力の確保が課題です。

会社が買い取る場合の財源規制

会社が譲渡制限株式を買い取る場合、その効力を生ずる日における分配可能額を超えて買い取ることはできません(会社法第461条第1項第1号)。分配可能額は、貸借対照表の純資産の額とは異なります。剰余金の額を出発点として、自己株式の帳簿価額その他の額を控除して算定します(会社法第446条、第461条第2項)。

買取りの額が分配可能額を超えた場合、金銭を受け取った者及び業務執行者は、会社に対して支払義務を負います(会社法第462条第1項)。さらに、その事業年度に欠損が生じたときは、業務執行者が欠損の額を填補する責任を負うことがあります(会社法第465条第1項)。資金があるかどうかではなく、分配可能額があるかどうかが判断の分かれ目です。直近の計算書類から算定してください。

指定買取人の選定 誰を指定することができるのか

会社法は、指定買取人の資格について特段の制限を置いていません。したがって、代表取締役その他の役員、既存の支配株主、後継者、取引先の法人、持株会などを指定することができます。実務では、次の点を考慮して選定します。

  • 買取代金及び供託の資金を、通知の時点で確保することができるかどうか。供託は買取りの通知と同時に必要です。
  • 指定を受けた後に価格の紛争が長引いた場合、その期間を通じて資金を拘束されることに耐えられるかどうか。
  • 指定買取人が株主となった後の持株比率が、会社の支配の構造にとって望ましいものとなるかどうか。
  • 指定買取人が役員である場合、利益相反の取引に当たらないかどうか。会社が買い取るのではなく個人が買い取る形ですので、通常は該当しませんが、資金の融通を会社が行うときは別途の検討を要します。

分配可能額が乏しい会社では、会社が買い取る道は事実上閉ざされます。その場合、指定買取人の選定が唯一の現実的な選択肢となりますので、2週間の間に候補者の意思と資金とを固めておく必要があります。この点が、期限の管理と並んで、会社の側の実務上の最大の難所です。

買取りの通知と供託

会社が買い取る場合、会社は、買い取る旨及び買い取る株式の数を株主に通知します(会社法第141条第1項)。この通知に先立ち、1株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額を、本店の所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を株主に交付しなければなりません(会社法第141条第2項)。指定買取人が買い取る場合も、指定買取人が同様の通知及び供託をします(会社法第142条第1項、第2項)。

株券発行会社である場合、通知を受けた株主は、通知を受けた日から1週間以内に株券を供託しなければなりません(会社法第141条第3項)。株主が供託をしないときは、会社は売買契約を解除することができます(会社法第141条第4項)。指定買取人の場合も同様です(会社法第142条第3項、第4項)。株券を発行する旨の定款の定めがあるかどうかを、登記事項証明書により御確認ください。

なお、株主が譲渡等承認請求を撤回するには、会社又は指定買取人の承諾を要します(会社法第143条第1項、第2項)。買取りの通知をした後に株主が一方的に手を引くことはできません。供託の実務の詳細は、供託を扱うページに整理しています。

価格の協議と、売買価格の決定の申立てへの備え

買取りの通知をした後は、価格の話に移ります。売買価格は、当事者の協議により定めます(会社法第144条第1項、第7項)。協議が調わない場合、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対し売買価格の決定を申し立てることができます(会社法第144条第2項、第7項)。この申立ては、株主の側だけでなく、会社又は指定買取人の側からもすることができます。

申立てがないまま20日が過ぎた場合

協議も調わず、申立てもされないまま20日が経過したときは、1株当たり純資産額に買い取る株式の数を乗じて得た額が売買価格となります(会社法第144条第5項、第7項)。これは供託した額と一致しますので、会社の側にとっては予測可能な結末です。もっとも、純資産の額が大きい会社では、この額が会社にとって過大となる場合があります。会社の側から申し立てるべき場面があるのは、このためです。純資産の額が実態を上回っている会社では、20日の期限は会社の側にとっての期限でもあります。

裁判所が考慮する事情

裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して、売買価格を決定します(会社法第144条第3項)。手続は非訟事件手続法によります。実務では、純資産価額法、収益還元法、DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)、配当還元法、類似業種比準方式といった評価の手法が、会社の規模、業種、株主の属性に応じて組み合わされます。

会社の側は、しばしば税務上の評価額をそのまま主張しますが、税務上の評価は課税のための算定であり、裁判所を拘束しません。会社の側においても、早い段階で評価の専門家を交え、算定の前提となる数値を固めておくことが有利に働きます。とりわけ、事業計画の合理性、非事業用資産の取扱い、役員報酬の水準、含み損益のある資産の時価は、争点となりやすい項目です。

実務で頻発する手続上の誤り

当事務所がご相談をお受けする中で、繰り返し目にする誤りを挙げます。

第1に、2週間の起算点を、社内で書面を回覧し終えた日と誤解している例です。起算点は請求の日であり、社内の処理の進み具合とは関わりません。

第2に、承認をしない旨の通知だけをして、買取りの通知を失念する例です。買取りの請求が併せてされている場合、承認をしない旨の通知のみでは手続は完結しません。40日の期限が続いています。

第3に、供託をせずに買取りの通知だけをする例です。供託と供託を証する書面の交付は、通知の要件です。

第4に、取締役会を廃止しているのに、登記の文言に従って取締役会の決議を経たものとして処理する例です。決議の瑕疵は、譲渡の効力を争われる原因となります。

第5に、分配可能額を確認しないまま、会社が買い取る旨の決議をする例です。財源規制に反した買取りは、業務執行者の責任問題となります。

第6に、請求をした株主を議決権の計算から除かずに特別決議の成否を判断する例です(会社法第140条第3項)。定足数及び賛成数の計算を誤りますと、決議そのものが取り消され得ます。

弁護士に依頼するとき、会社が任せられる範囲

譲渡等承認請求を受けた会社から、当事務所が実際にお引き受けしている業務は、次のとおりです。

第1 書面の法的性質の判定と、期限の確定

届いた書面が会社法第136条又は第137条の請求に当たるか、買取りの請求が併せてされているか、共同請求の要件を満たすかを判定し、2週間、40日、20日の期限を確定してお伝えします。

第2 定款及び登記の整合の確認と、決議の設計

承認をする機関を定款及び登記により確定し、招集の手続、議案の記載、議決権の計算、議事録の作成までを設計します。株主総会の招集の期間が足りない場合の手当てもあわせて検討します。

第3 指定買取人の選定及び資金の手当ての助言

候補者の適否、供託の資金の準備、指定買取人と会社との間の取決めの整理を行います。分配可能額の算定を踏まえ、会社が買い取る道と指定買取人による道とを比較してお示しします。

第4 通知書及び供託の手続の代行

承認をしない旨の通知書、買取りの通知書を作成し、配達証明付きの内容証明郵便により発送します。供託の手続、供託を証する書面の交付についても御一緒に進めます。

第5 価格の協議及び売買価格の決定の申立てへの対応

協議の窓口となり、評価の専門家と連携して主張と資料を組み立てます。申立てがされた場合の応訴、及び会社の側から申し立てる場合の判断も、あわせてお引き受けします。

第6 その後の少数株主対策への接続

1件の譲渡等承認請求は、株式の分散という根本の問題の表れであることが少なくありません。自己株式の取得、株式の併合、株式等売渡請求といった集約の手法の選択については、少数株主対策を扱うページに整理しています。

承認をすると決めた場合に、会社が備えておくこと

資金の事情から承認をせざるを得ない会社も少なくありません。その場合であっても、承認は「何もしないこと」ではありません。次の3点を整えてください。

第1 名義書換えと株主名簿の整備

譲渡が効力を生じた後、株式取得者は会社に対し株主名簿記載事項の記載を請求します(会社法第133条第1項)。会社は、株主名簿に記載し、以後はその者を株主として取り扱います。この機会に、株主名簿の記載の全体を点検してください。長年にわたり相続の届出がされていない株主、住所が不明の株主が残っている会社が多く見られます。次の譲渡等承認請求に備える意味でも、名簿の整備は有効です。

第2 新たな株主に対する情報の提供の範囲の整理

新たな株主は、株主総会における議決権のほか、株主名簿の閲覧及び謄写の請求(会社法第125条第2項)、会計帳簿の閲覧及び謄写の請求(会社法第433条第1項)といった権利を持ちます。請求を受けてから対応を考えるのではなく、拒むことができる場合(会社法第125条第3項、第433条第2項)をあらかじめ整理し、提供する資料の範囲を決めておいてください。

第3 株式の分散そのものへの手当て

1件の承認は、株主の数を1名増やします。分散が進んだ会社では、株主総会の運営そのものが重くなります。承認をした後の落ち着いた時期に、自己株式の取得、株式の併合、株式等売渡請求といった集約の手法を比較し、中期の方針を決めておくことをお勧めします。

いま確認していただきたいこと

譲渡等承認請求が届いている会社は、本日のうちに次の事項を御確認ください。

第1に、書面が到達した日を、封筒又は配達証明により確定してください。ここから2週間です。

第2に、書面に「承認をしない場合には会社又は指定買取人が買い取ることを請求する」旨の記載があるかどうかを御確認ください。

第3に、登記事項証明書を取得し、株式の譲渡制限に関する規定の文言、承認をする機関、及び株券を発行する旨の定めの有無を御確認ください。

第4に、定款を開き、承認をする機関に関する別段の定め、及び2週間を下回る期間の定めの有無を御確認ください。

第5に、直近の計算書類から分配可能額を算定し、会社が買い取る道を採り得るかどうかを判定してください。

第6に、指定買取人の候補者を挙げ、供託の資金を含めて、2週間以内に意思を固めることができるかどうかを見積もってください。

よくある御質問

承認をしたくないのですが、買い取る資金がありません

指定買取人を指定する道があります(会社法第140条第4項)。会社ではなく、指定を受けた者が自らの資金で買い取りますので、会社の分配可能額の制約を受けません。取締役会設置会社では取締役会の決議により指定します。ただし、指定買取人は買取りの通知に先立って供託をしなければなりませんので(会社法第142条第2項)、資金の手当ては2週間の間に済ませておく必要があります。

株主が買取りの請求を書いていません。どうすればよいですか

承認をするかどうかを決定し、その内容を2週間以内に通知すれば足ります。承認をしない旨を通知した場合、会社に買取りの義務は生じません(会社法第140条第1項は、会社法第138条第1号ハの請求があった場合に適用されます)。株主の側で改めて請求をし直すことは妨げられませんので、その場合には期限が新たに始まります。

相手方が株式買取業者です。承認をしない扱いで問題ありませんか

承認をするかどうかは、会社が自らの判断で決定することができます。相手方が誰であるかを理由に承認をしないと決めること自体は妨げられません。もっとも、買取りの請求が併せてされているときは、承認をしないと決めた以上、会社又は指定買取人が買い取る義務を負います。「承認をしない」という判断は、「買い取る」という判断と一体です。資金と価格の見通しを立てたうえで決定してください。

2週間では株主総会を開くことができません

取締役会設置会社であれば取締役会の決議により決定することができますので、招集の期間は問題となりにくいものです。株主総会による場合であっても、非公開会社の招集の通知は原則として1週間前までです(会社法第299条第1項)。株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができます(会社法第300条)。定款に別段の定めがある場合もありますので、あわせて御確認ください。

提示された価格が高すぎます。会社から争うことはできますか

できます。売買価格の決定の申立ては、株主の側だけでなく、会社又は指定買取人の側からもすることができます(会社法第144条第2項、第7項)。買取りの通知があった日から20日以内です。純資産の額が実態を上回っている会社では、申立てをしないまま20日が過ぎますと、1株当たり純資産額を基礎とする額で確定してしまいます(会社法第144条第5項)。会社の側にとっても20日は期限です。

一度承認をしてしまいました。取り消すことはできますか

承認の決定を会社が一方的に撤回することは、原則としてできません。既に譲渡の効力が生じ、名義書換えも済んでいる場合には、その株主が株主として扱われます。この段階からの対応は、譲渡制限の手続ではなく、自己株式の取得その他の株式の集約の手法によることになります。少数株主対策を扱うページを御覧ください。

まとめ

譲渡制限株式の譲渡等承認請求を受けた会社にとって、最初の論点は、承認をするかどうかではなく、期限がいつ切れるかです。請求の日から2週間以内に決定の内容を通知しなければ、会社は承認をしたものとみなされます(会社法第145条第1号)。承認をしない旨を通知した後も、40日という次の期限が続きます。

承認をしないと決めるのであれば、会社が買い取るか、指定買取人を指定するかを、同じ2週間の間に固めなければなりません。会社が買い取る道は分配可能額の制約を受けます(会社法第461条第1項第1号)。分配可能額が乏しい会社では、指定買取人の選定が現実的な唯一の道となります。買取りの通知には供託が先行しますので(会社法第141条第2項、第142条第2項)、資金の手当ても同時に進めることになります。

そして価格です。協議が調わなければ、買取りの通知があった日から20日以内に裁判所へ申し立てます(会社法第144条第2項、第7項)。この申立ては会社の側からもすることができ、純資産の額が実態を上回る会社にとっては、申立てをしないことこそが損失につながります。1通の書面が届いた日から、会社の側の時計も動き始めています。早い段階でご相談ください。

出典

会社法(平成17年法律第86号)第107条第1項第1号、第108条第1項第4号、第136条、第137条第1項及び第2項、第138条第1号ハ、第139条第1項及び第2項、第140条第1項から第5項まで、第141条第1項から第4項まで、第142条第1項から第4項まで、第143条第1項及び第2項、第144条第1項から第7項まで、第145条、第299条第1項、第300条、第309条第2項第1号、第446条、第461条第1項第1号及び第2項、第462条第1項、第465条第1項

会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第26条

非訟事件手続法(平成23年法律第51号)

具体的なご相談をお考えの皆様へ

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