株式併合によるスクイーズアウトとは?使用場面やメリット・デメリットなど解説します!

スクイーズアウト株式併合の手続きの流れ!

スクイーズアウトとは

スクイーズアウトとは、企業が少数株主を法的手続に基づき排除し、支配株主が持株比率を100%にして完全支配権を確立するための手法です。特にM&Aや事業承継、上場廃止など、企業再編の場面で活用されることが多く、企業の意思決定の迅速化や経営の安定、効率性の向上につながります。

スクイーズアウトには、「株式併合」「特別支配株主による株式等売渡請求制度」「全部取得条項付種類株式」「株式交換」といった代表的な手法があります。

「株式併合」は、複数の株式をまとめて株数を減らすことで端数株主を生じさせ、その株式を買い取ることで少数株主を排除する方法であり、株主総会の特別決議によって実行されます。

「特別支配株主による株式等売渡請求制度」は、発行済株式の90%以上を保有する株主が、残りの少数株主に対して株式の売却を請求できる制度です。高い持株比率を前提とするため利用場面は限られますが、効率的に完全子会社化を進められます。

「全部取得条項付種類株式」は、定款でその種類株式を設定し、会社が強制的に取得できるようにする制度です。事前の設計が必要ですが、公開会社でも利用することが可能です。

「株式交換」もスクイーズアウトの手法の一つです。これは完全親会社が自社株式を交付して対象会社を完全子会社化する仕組みで、グループ再編やM&Aの場面で広く使われています。

このようにスクイーズアウトには複数の方法があり、会社の状況や目的に応じて、株式併合・売渡請求・種類株式・株式交換といった制度の中から選択されます。

スクイーズアウトの主なメリットとしては、意思決定の迅速化、株主名簿や通知コストの軽減、税制上の優遇、上場廃止の円滑化などが挙げられます。一方で、対価の支払い負担や手続に要する時間・コスト、さらには少数株主による裁判リスクなどもあるため、慎重な対応が求められます。

スクイーズアウト株式併合とは

株式併合とは、複数の株式をより少数の株式にまとめて株式の数を減少させる手続きです(会社法180条)。株式併合を行った結果、1株未満の端数株式が発生した場合、会社又は株主がその株式を買い取ることにより、端数株式しか保有していない株主を株主から排除することができるため、少数株主排除(スクイーズアウト)のための手続きとして用いられます。

スクイーズアウトは、支配株主による経営の迅速化や安定性確保、企業再編の効率化など経営戦略上の意義を持つ一方、少数株主の権利保護とのバランスが重要です。そのため、スクイーズアウトを行うためには、法定手続や公正な価格の確保が求められます。

⇒少数株主の排除(スクイーズアウト)の方法を見る!

スクイーズアウト株式併合の手続きの流れ(フロー)

スクイーズアウト株式併合の手続きの流れ(フロー)は、以下のとおりです。

株式の併合

第180条 株式会社は、株式の併合をすることができる。株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、①併合の割合、②株式の併合の効力発生日、③効力発生日における発行可能株式総数、を定めなければならない。取締役は、株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

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株券の提出に関する公告等

第219条 株券発行会社は、株式の併合をする場合には、株式の併合の効力が生ずる日(「株券提出日」)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の1箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない場合は、この限りでない。

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株主に対する通知等

第181条(第182条の4) 株式会社は、効力発生日の20日前(※)までに、株主に対し、同項各号に掲げる事項を通知又は公告しなければならない。

閉鎖会社では株主総会招集通知を原則として株主総会日の7日前までに発送する必要があります(会社法299条1項)。

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株式の併合に関する事項に関する書面等の備置き及び閲覧等

第182条の2 株式の併合をする株式会社は、①株主総会の日の2週間前の日、②株主に対する通知の日又は公告の日のいずれか早い日のいずれか早い日から効力発生日後6箇月を経過する日までの間、同項各号に掲げる事項その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。株式の併合をする株式会社の株主は、当該株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、閲覧謄写等をすることができる。

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株式の併合をやめることの請求

第182条の3 株式の併合が法令又は定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、当該株式の併合をやめることを請求することができる。

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効力の発生

第182条 株主は、効力発生日に、その日の前日に有する株式の数に株式併合の割合を乗じて得た数の株式の株主となる。株式の併合をした株式会社は、効力発生日に、発行可能株式総数に係る定款の変更をしたものとみなす。

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一に満たない端数の処理

第234条・第235条 株式会社が株式の分割又は株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない。

株式会社は、競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。

株式会社は、売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、①買い取る株式の数、②買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額、を定めなければならない。取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

なお、端数処理に関しては、裁判所に売却許可を申し立てることも可能であり、市場価格のない株式や特殊な事情がある場合には、この方法も活用されます。

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反対株主の株式買取請求1

第182条の4 株式会社が株式の併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は、当該株式会社に対し、自己の有する株式のうち1株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる。「反対株主」とは、①株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主のことを言う。

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反対株主の株式買取請求2

第182条の4 株式買取請求は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数を明らかにしてしなければならない。

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反対株主の株式買取請求3

第182条の4 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。

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株式の価格の決定等1

第182条の5 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から60日以内にその支払をしなければならない。株式の価格の決定について、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

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株式の価格の決定等2

第182条の5 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第1項の期間の満了の日後の年6分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。株式会社は、株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。

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株式の価格の決定等3

第182条の5 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

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株式の価格の決定等4

第182条の5 株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。

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株券の提出に関する公告等2

第219条 株券提出日までに当該株券発行会社に対して株券を提出しない者があるときは、当該株券発行会社は、当該株券の提出があるまでの間、当該行為によって当該株券に係る株式の株主が受けることのできる金銭等の交付を拒むことができる。株式併合株式に係る株券は、株券提出日に無効となる。

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株式の併合に関する書面等の備置き及び閲覧等

第182条の6 株式会社は、効力発生日から6箇月間、株式の併合が効力を生じた時における発行済株式の総数その他の株式の併合に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。株式の併合をした株式会社の株主又は効力発生日に当該株式会社の株主であった者は、当該株式会社に対して、その営業時間内は、いつでも、閲覧謄写等を請求することができる。

⇒少数株主の排除(スクイーズアウト)の方法を見る!

まとめ

今回は、株式併合によるスクイーズアウトについて説明をしました。

スクイーズアウトは、企業が少数株主を排除して完全支配を実現するための重要な手法であり、M&Aや上場廃止、事業承継などの場面で広く活用されています。

代表的な方法のひとつが株式併合で、会社法に基づいて株主総会の決議や端数株式の処理、反対株主の株式買取請求といった明確なプロセスが定められています。

株式併合によるスクイーズアウトは、比較的利用しやすい制度である一方、少数株主の権利保護や公正な価格の確保を怠ると紛争に発展するリスクもあります。そのため、実務においては、スクイーズアウトの目的や企業再編の全体像を踏まえて、適切な手続きを進めることが不可欠です。

このように、スクイーズアウトと株式併合は企業の経営戦略において重要な位置付けを持つ制度であり、経営の迅速化や安定性を実現する一方で、法的要件を遵守した慎重な運用が求められます。実際に活用する際には、専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいでしょう。