非上場株式の株式買取業者から会社に通知が届いたらどうする?返事の前に確認すべきこと
お困りではありませんか?

非上場株式の買取業者から会社宛てに通知が届くと、「放置して大丈夫か」「何を返せばよいか」と不安になりがちです。譲渡制限株式では、会社の対応次第で手続が進行したり停止したりします。さらに会社法上の期限が絡む通知もあるため、返事の前に確認すべき順番があります。
このページでは、通知の文面を落ち着いて読み解き、株式発行会社が最初に行うべき確認と作業を順番に整理します。個別の結論は定款や会社の状況で変わるため、判断に迷う場合は早めに弁護士へ相談してください。
このページの対象と使い方
このページが想定する会社像と、どの順番で読めば迷わず整理できるかを示します。通知の種類が分からない段階でも読み進められる構成です。
対象となる会社
このページは、次のような会社を想定しています。
- 非上場会社で株式に譲渡制限が付いている
- 株主が第三者へ株式を売却し、その相手方が株式買取業者だった
- 株式買取業者またはその代理人から会社宛てに通知書が届いた
株主側が売却先を探す目的の情報ではなく、会社側が「会社としてどう動くか」を整えるための内容です。
このページでできること
このページで整理できることは主に次の3つです。
- 通知が何の手続を求めているかを切り分ける
- 期限が絡む可能性を見落とさないための確認順を把握する
- 電話や口頭で不用意に進めないための社内体制を整える
通知対応で困る原因は、法律論の前に「社内で何が起きているかが整理できていない」ことが多いです。ここを先に整えることが目的です。
進め方
まず「返事の前に確認すべき3つ」で期限と入口を押さえます。次に「3分状況診断」で自社の段階を把握します。その後「初動10分チェックリスト」で、受領当日〜48時間で終わらせたい作業を整理します。最後に「通知の種類別に確認するポイント」で当てはまる箇所を確認してください。
まず結論:返事の前に確認すべき3つ
ここでは、通知を受け取った直後に最優先で確認すべき3点を整理します。返事の文案を作る前に、期限・書面の種類・社内決裁の3つだけを先に押さえます。
1. 期限が動く可能性を確認する
最初に見るべきは、期限です。譲渡制限株式に関する承認請求の場面では、会社が一定期間内に通知しないと「承認したものとみなされる」仕組みがあります。代表例が会社法145条です。
会社法145条では、譲渡等承認請求(会社法136条・137条)の請求の日から原則2週間以内(定款でより短い期間を定めている場合はその期間)に、会社が承認/不承認の決定内容を通知しないと、承認したものとみなされる類型があります。さらに、不承認となった場合でも、会社が自ら買い取る等の次の手続に進む類型では、不承認通知後の所定期限内に「会社による買取りの通知」等がないと承認したものとみなされる場面があります(例外あり)。
ここで大切なのは、相手が書いた回答期限だけを頼りにしないことです。社内では、まず「請求日(いつ請求があった扱いになるか)」を記録できる形で確定し、法定期限に間に合うように逆算して社内締切を置く必要があります。封筒も含めて保管し、受領日・到達日が説明できるように記録し、暫定でもよいので社内締切を設定してください。
2. 通知の種類を見分ける
次に、書面が何を求めているのかを特定します。株式買取業者から会社へ届く書面は、入口が違うだけで対応が大きく変わります。代表的なのは、譲渡等承認請求(会社法136条・137条)、株主名簿の名義書換え請求(原則:会社法133条。ただし譲渡制限株式では会社法134条に注意)、帳簿閲覧や総会関連の請求、買い取り交渉の打診です。
書面のタイトルではなく、本文で「会社に何を求めているか」を一文で要約します。承認を求めているのか、名義書換えを求めているのか、閲覧を求めているのかを切り分けてください。この分類が曖昧なまま返事をすると、話がずれた状態で往復が増えます。
3. 社内外の窓口を先に一本化する
3つ目は、会社の窓口を一本化することです。通知対応では、社内の担当者ごとに返答がずれると、相手は「会社として固まっていない」と受け取りやすくなります。結果として電話や書面が増え、担当者が消耗し、判断が遅れます。
まずは、社外対応の窓口担当を一人に決めてください。電話は折り返しにし、重要なやり取りはメールや書面に寄せます。返答は社内で確認してから出す運用にします。これだけで、不要なやり取りが減ります。
いまの段階を把握する
ここでは、届いた書面がどの段階の通知なのかを短時間で整理します。書面の種類と併せて、優先順位を決めるための材料をそろえます。
買取業者から届く通知で多いパターン
非上場株式の買取業者から会社へ届く書面は、概ね次のどれかに当てはまります。複数が同封されていることもあります。
- 譲渡等承認請求(会社法136条)
- 株式取得者からの承認請求(会社法137条)
- 株主名簿の名義書換え請求(原則:会社法133条。ただし譲渡制限株式は会社法134条で例外整理)
- 帳簿閲覧や総会関連の請求が同封されている
- 法的請求というより照会に近い文面で情報提供を求めている
混ざっている場合は、期限が短そうなものから確認してください。期限は並走するため、順番が逆になると間に合わないことがあります。
いま受け取った書面はどれに近いか
見分けるときは、次の観点が分かりやすいです。
- 本文に「承認の可否の決定」を求める文言があるなら承認請求の可能性が高い
- 本文に「株主名簿の書換え(名義書換え)」を求める文言があるなら名義書換え請求の可能性が高い
- 「一定期間内に通知がない場合は承認扱い」といった趣旨の記載があるなら、会社法145条を意識している可能性が高い
タイトルだけで判断しないでください。本文の「請求内容」が結論を左右します。
会社にとっての優先順位は何か
会社側の優先順位は、一般に次の順番になります。
- 期限があるかどうか
- 会社として承認するか不承認にするか
- 不承認の場合に会社の買取りや指定買取人など次の手続が必要か
- 名義書換えや帳簿閲覧など株主権行使への対応が必要か
「相手が本当に株主か」を確認したくなるのは自然です。ただし承認請求が絡むと、期限が先に走る場合があります。事実確認と期限対応を並行で進める発想が必要です。
初動チェックリスト
ここでは、受領当日から48時間で終わらせたい作業を時系列で整理します。作業の順番を固定することで、社内の混乱と期限事故を減らします。
受領直後にやること
最初にやることは、証拠と日付の確保です。後から「いつ届いたか」が説明できないと、社内の判断も外部への説明も難しくなります。
- 封筒ごと保管する
- 会社の受領日(社内で特定できる日付)を確定する
- 送付者と連絡先を控える
- 書面一式をスキャンする
- 社内の窓口を決める
その日のうちにやること
次に、書面の仮分類と期限の把握です。返事の文案はこの段階では作りません。事実の整理が先です。
- 書面の種類を仮分類する
- 期限を一覧化する(相手の期限/法定期限の可能性)
- 定款と株主名簿の所在を確認する
- 過去の譲渡承認の運用(誰が決めて、どう通知したか)を確認する
48時間以内にやること
48時間以内に、社内の方針検討の土台を作ります。社内で何を決めるかが分かると、必要な資料も自然に決まります。
- 会社の方針のたたき台を作る(承認/不承認の方向性は「検討中」でよい)
- 相手に求める資料の範囲を決める(必要最小限)
- 連絡は書面かメールに寄せる(口頭を減らす)
- 弁護士に見せる資料を揃える(通知一式、定款、株主名簿など)
通知の種類別に確認するポイント
ここでは、通知の種類ごとに会社側が最初に確認すべき点を整理します。該当しそうな項目だけ読んでも全体像がつかめるようにまとめています。
譲渡等承認請求(会社法136条)が届いた場合
譲渡制限株式では、株主が第三者へ譲渡しようとするとき、会社に承認を求める仕組みがあります。これが会社法136条の枠組みです。会社側は承認するか不承認にするかを決め、通知する流れになります。会社の機関決定が必要な場合があるため、取締役会設置会社かどうか、定款で別の定めがないかも確認します。
まず確認したいのは、対象株式の数と種類、譲受人として記載された相手の情報、請求日と受領日の関係です。また、不承認の場合に「会社または指定買取人が買い取ること」を求める内容が含まれているかも確認します。
会社法145条の期限が絡む可能性があるため、放置は避けてください。不承認にするなら、その後に会社の買取りや指定買取人の選定に進む可能性があります。資金面も含めて見通しを持って判断する必要があります。
株式取得者からの承認請求(会社法137条)が届いた場合
第三者が「すでに取得した」として承認を求めてくるのが会社法137条の入口です。ここで重要なのは、取得の前提(どういう経緯で取得したのか)を確認することです。譲渡契約書の写しや取得経緯の説明が添付されているかを見てください。資料が乏しい場合は、事実確認が終わっていない段階で結論を出さない運用にしてください。
また、請求の形式面でも確認点があります(請求者の名義、取得の態様など)。期限は譲渡等承認請求と同様に問題になります。会社法145条の枠組みが関係する可能性があるため、社内の段取りを止めないことが大切です。
株主名簿の名義書換え請求が届いた場合
名義書換えは、会社が誰を株主として扱うかに直結します。株式譲渡の対抗要件は、取得者の氏名・住所等が株主名簿に記載または記録されること(会社法130条)です。
一方、名義書換えの請求権は、原則として会社法133条に基づきます。ただし、譲渡制限株式では注意が必要です。会社法134条により、譲渡制限株式については原則として133条が適用されません(ただし、会社の承認を得ている場合や、指定買取人・相続等の例外に当たる場合は別途整理が必要です)。
承認の有無が確認できない段階で名義を変えてしまうと、後で説明が難しくなります。まず譲渡制限の有無と承認の有無を確認し、例外に当たるかどうかを整理してから判断してください。
株主総会招集請求が同封されている場合
通知の中に総会招集を求める内容が含まれることがあります。まず確認したいのは、その請求者を会社として株主として扱う前提が整っているかです。株主名簿上の名義、譲渡制限株式なら承認の有無を確認してください。
次に、請求内容が具体的かを見ます。目的事項や議案がどこまで特定されているかで、会社側の準備量が変わります。承認請求の期限と並走する場合もあるため、総会だけを切り出して判断しないことが大切です。
会計帳簿閲覧謄写請求が同封されている場合
会計帳簿の閲覧や謄写は、一定の要件を満たす株主が請求できる制度です(会社法433条)。原則として、議決権3%以上(または発行済株式3%以上)を有する株主が、請求理由を明らかにして請求します(定款で要件が調整されている場合もあります)。
誰でも請求できるわけではなく、会社が拒める場合も条文上整理されています。このため、対応を急ぐ前に、請求者が株主として扱われる立場にあるか、持株比率・議決権などの要件を満たすかを確認してください。閲覧の対象範囲や目的が曖昧な場合は、まず整理を求める方が安全です。
やってはいけない対応と理由
ここでは、通知対応で起きやすいミスと、なぜ避けるべきかを整理します。避けるべき理由が分かると、社内の協力も得やすくなります。
期限を放置する
承認請求が絡む場合、一定期間内に会社が通知しないと承認扱いになる類型があります(代表例:会社法145条)。期限を把握しないまま放置すると、会社の意思と違う結果に近づくことがあります。忙しい時ほど、受領日と期限の確認だけ先に行ってください。
電話で口頭回答してしまう
口頭のやり取りは記録が残りにくい一方で、相手側は記録していることがあります。後から「会社はこう言った」と整理されると、会社側で否定しづらくなります。原則は書面かメールで返答し、やむを得ず電話対応した場合は日時と要点をメモとして残してください。
相手のひな形にそのまま乗る
買取業者側の書面には、会社側に不利な前提が混ざっていることがあります。たとえば承認が前提のような文言や名義書換えが当然であるかのような表現です。事実確認が終わる前に前提を受け入れないことが重要です。返答は社内確認の上で行う運用にしてください。
株主情報を過剰に渡す
株主名簿や株主情報の扱いは、会社にとって重要です。相手の求めに応じて何でも出すのではなく、必要性と根拠を確認してから開示範囲を決めてください。出した後に取り消すことはできないため、最初の線引きが重要です。
弁護士に相談したほうがよいケース
ここでは、社内だけで抱えると負担が増えやすい状況を整理します。どのケースも、期限と手続が絡むため早めの整理が向きます。
通知が複数届いた
承認請求と名義書換え請求と帳簿閲覧請求が同時に届くなど、論点が混線している状態です。優先順位を誤ると、期限対応が遅れます。まず分類と期限整理を行い、必要なら弁護士に優先順位の付け方から相談してください。
定款や株主名簿が整っていない
譲渡制限の内容や承認機関の定めは定款に出ます。株主名簿が更新されていないと、名義や経緯が説明できず、社内の決裁が進みません。この状態では整理に時間がかかるため、早めに外部に確認を入れる方が結果的に早いことがあります。
会社や役員に強い要求がある
短すぎる回答期限の提示、訪問や面談の強い要求、担当者個人への執拗な連絡がある場合は、会社側の窓口と運用を早期に整えないと長引きやすくなります。窓口の一本化と記録の徹底を優先してください。
すでに名義書換えが進んでしまった
名義書換え後は、初動よりも整理すべき事項が増えます。いつ誰がどの根拠で手続を進めたかを集め、次に何を争点にするのかを組み直す必要が出やすいです。履歴と資料の保全が先です。
よくある質問
ここでは、通知が届いた直後に多い疑問に対して、まず何を確認すべきかを整理します。結論を急がず、確認点から順に見てください。
Q:買取業者に返事をしないとどうなりますか?
書面の種類によります。承認請求が絡む通知では、会社法145条により、会社が期限内に必要な通知をしないと「承認したものとみなされる」場合があります。一方で照会に近い文面の場合は、直ちに法定期限が動かないこともあります。まずは会社法136条・137条の承認請求に当たるかどうかを切り分けてください。
Q:会社は株式の買取を止められますか?
譲渡制限株式では、会社が承認するか不承認にするかを判断する枠組みがあります(会社法136条〜)。ただし不承認にした場合は、会社が買い取る、または買い取る人を指定する手続に進む可能性があります(会社法140条以下)。資金面や社内体制も含めて検討が必要です。
Q:名義書換えを拒否できますか?
譲渡制限株式では、会社法134条により、取得者による名義書換え請求(会社法133条)が原則として制限されます(ただし承認取得済み等の例外あり)。拒否できるかどうかは、対象株式の性質と承認手続の状況で決まります。書面の組み合わせを確認してから判断してください。
Q:対応や検討のためにどんな資料を用意すればよいですか?
次があると整理が早くなります。
- 受領した通知書一式と封筒
- 定款の最新版
- 株主名簿の現状版と更新履歴が分かる資料
- 株券発行会社かどうかが分かる資料
- 過去に譲渡承認を扱った際の議事録や社内記録
株式買取業者の対応にお困りならご相談ください
通知対応は、最初の48時間の整理でその後の負担が大きく変わります。判断に迷う場合や、期限が迫っている場合は、早めに専門家へ相談してください。ご相談内容の秘密は厳守します。
お困りではありませんか?

