〔事例〕株式買取業者による非上場株式・少数株式の買い取りを非弁行為として無効とした事件

敵対的少数株主・株式買取業者に
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譲渡制限株式の売買契約に関する裁判例として、「大阪高等裁判所判決|令和6年7月12日|令和6年(ネ)第149号株主権確認等請求控訴事件」の主な判旨について解説します。
この裁判の最重要論点は、被告会社が株主になる意思を持たずに、譲渡制限株式を株主から譲り受けたとみられる場合に、その譲渡制限株式の売買契約は発行会社に対しても有効であるか否かという点です。
原審で大阪地方裁判所は、原告の主張を退けましたが、大阪高等裁判所で行われた控訴審においては、被告会社が株主になる意思を持たず、譲渡制限株式を株主から実質価格より低廉な価格で譲り受けて、その後、株式発行会社やその指定買取人に対して実質価格で売却することにより、その差額で事業利益を上げることを主な事業目的として事業を行っており、この業に基づいて売買契約の締結をすることは、国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがないとはいえず、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとは認められないから、本件売買契約は弁護士法73条に違反して無効であるとして、逆転判決で原告の主張を認めました。
また、被告会社と譲渡制限株式の株主との売買契約が上記のとおり無効であるため、被告会社と譲渡制限株式発行会社が指定した指定買取人との売買契約に基づく指定買取人の被告会社に対する代金債務は存在しないと判決されました。

「事案の概要」

原告(株式会社つぼ市製茶本舗):本事案で問題となる譲渡制限株式の発行会社
原告(株式会社CHA):つぼ市製茶本舗が指定した指定買取人
被告会社:株式買取会社
P2:被告会社に株式会社つぼ市製茶本舗の譲渡制限株式を売却した株主

被告P2は、平成30年9月13日頃、本件株式を含む同人の保有する原告つぼ市の無議決権株式52株について、当時の代理人弁護士を介し、原告CHAに対して、売却を打診し、売買代金額についての交渉が行われたが、合意には至らなかった。
P2と被告会社は、令和2年10月6日、P2が被告会社に対してP2の保有するつぼ市の無議決権株式40株(本件株式)を代金4800万円(1株当たり120万円)で譲渡する旨の売買契約を締結し、その頃、P2は、被告会社に対し、本件株式についての株券を交付した。
被告会社は、令和2年10月6日頃、つぼ市に対し、弁護士を介さずに、被告会社の代表取締役としてのP3の名の下、「株主として資料提出及びヒヤリング依頼の件」と題する文書を送付した。
被告らは、令和2年10月20日頃、つぼ市に対し、弁護士を介さずに、連名で、「株式譲渡承認請求書」と題する文書を送付し、P2の被告会社に対する本件株式の譲渡を承認すること、承認しない場合にはつぼ市又はその指定買取人が本件株式を買い取ることを請求した。
これに対し、つぼ市は令和2年10月31日に開催した取締役会において、本件株式の譲渡を承認しないことを決定し、同年11月1日頃、被告らに対し、その旨を通知し、CHAを本件株式の指定買取人として指定した。
CHAは、令和2年11月9日、会社法142条2項に基づき被告会社を被供託者として1億2855万7208円を供託した上で、同月10日付けで、被告らに対して、自らが本件株式の指定買取人として指定されたことを通知するとともに、上記の供託を証する文書を送付した。
これに対し、被告会社は、令和2年11月12日に本件株式についての株券を供託した後、CHAに対してその旨を通知するとともに、同月17日頃、CHAに対し、本件株式を総額1億4256万6480円(1株当たり356万4162円)で買い取るよう打診した。その際、公認会計士作成の令和2年10月30日付け意見書が添付されていた。

「請求の概要」

本件は、原告つぼ市が、被告P2が被告会社に対してつぼ市の無議決権株式40株(以下「本件株式」という。)を譲渡する本件株式売買契約は、通謀虚偽表示又は弁護士法72条若しくは73条違反に当たり無効であり、つぼ市と被告P2との間において、被告P2が従前から保有している株式を含むつぼ市の無議決権株式52株を有する株主であることの確認を求め、また、上記の株式譲渡がつぼ市によって承認されなかったことにより、指定買取人に指定された原告CHAが、被告会社に対し株式売買代金支払債務が存在しないことの確認を求めた事案です。

本件の争点は、〔1〕本件売買契約は通謀虚偽表示によるものとして無効か(争点1)、〔2〕本件売買契約は弁護士法72条に反し無効か(争点2)、〔3〕本件売買契約は弁護士法73条に反し無効か(争点3)でした。

「結論の概要」

1.(1)原告つぼ市と被告P2との間において、P2がつぼ市の無議決権株式52株を有する株主であることを確認する。
(2)原告CHAと被告会社との間において、CHAが被告会社に対して会社法142条1項に基づく令和2年11月10日付けの通知をしたことにより締結されたとみなされる上記両名間の売買契約に基づくCHAの被告会社に対する代金債務が存在しないことを確認する。
2.訴訟費用は、第1、2審とも被告人らの負担とする。

裁判所は、被告会社が株主になる意思を持たず、譲渡制限株式を実質価格より低廉な価格で譲り受けて、実質価格で売却することを主な事業目的として事業を行い、売買契約を締結することは、弁護士法73条に違反して無効であるとして、原告の主張を認めました。
また、被告会社とP2(譲渡制限株式の株主)との売買契約が無効となったため、被告会社と指定買取人との間の売買契約に基づく代金債務も存在しないとして、原告の主張を認めました。

「結論に至る論理の概要」
争点1:本件売買契約は通謀虚偽表示によるものとして無効か
・原告は、本件売買契約における代金額4800万円は、本件売買契約の締結後に被告会社がCHAに提示した売買代金額1億4256万6480円に比して著しく低廉な金額であるなどの事情を挙げ、本件株式を原告らに買い取らせることを目的として株式譲渡の外観を作出したにすぎず、通謀虚偽表示(民法94条1項)によるものとして、無効というべきであるとする。
・しかし、本件売買契約に係る代金の支払方法として本件合意書で定められた2回目以降の分轄払の内容と合致する金員(11回分、合計4700万円)が実際に被告会社からP2の預金口座に振り込まれていることが認められ、1回目の分割払均(令和2年10月17日支払分)である100万円についてみても、令和2年10月17日に手渡しで支払われ、同日中にP2の預金口座に合計100万円がATMから入金されている状況から、信用することができる。
・P2から被告会社に対して本件株式に係る株券も現に交付されていることも、本件売買契約が実体を伴うものであることを示すということができる。
これらの事情によれば、被告らの間において、真に本件株式を譲渡する意思を伴って本件売買契約が成立し、代金4800万円を対価として本件株式が譲渡されたとみるのが自然かつ合理的であり、本件売買契約が通謀虚偽表示によるものであったということはできない。として、争点1については、原審で原告の主張を退け、控訴審もこれをそのまま引用しました。

争点2:本件売買契約は弁護士法72条に反し無効か
・被告らの間においては本件売買契約書及び本件合意書が作成され、これらに基づき実際に売買代金4800万円が支払われるとともに本件株式に係る株券も交付されており、本件売買契約は売買としての実体を伴うものということができる。本件売買契約が締結された時点では、本件株式の譲渡が承認されるかはわからず、被告会社が原告に対し、本件株式の買取請求をすることになるのかも明らかでなかったことからしても、本件売買契約が実質的にはP2の保有する本件株式の買取請求を行うことを内容とするものであったということはできない。
・原告らは、本被告会社による買取請求が奏功した際にはその対価の一部をP2に還元するとの本件裏合意があったからである旨の主張をするが、P2は、本件株式の買取り代金として4800万円という代金額には満足していたことが認められ、本件各証拠によっても、本件裏合意の存在を認めることはできない。
以上によると、本件売買契約は売買としての実体を伴うものであり、本件売買契約が実質的にはP2の保有する本件株式の買取請求という法律事務を行うものである旨の原告らの主張は採用できず、本件売買契約が弁護士法72条に反し無効ということはできないとし、争点2についても、原審は原告の訴えを退け、控訴審もこれをそのまま引用しました。

争点3: 本件売買契約は弁護士法73条に反し無効か
争点3について、原審の大阪地方裁判所は、「被告会社による本件売買契約並びに本件株式に係る譲渡承認請求及び株式買取請求は、濫訴のおそれや、弁護士法72条本文の禁止の潜脱行為として国民の法律生活上の利益に対する弊害が生じるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められるため、同法73条に違反することはできない」としましたが、控訴審の大阪高等裁判所は、次の理由により原審の判断を覆す判決を下しました。
・P2から1株当たり120万円(40株で4800万円)の合意価格(以下「本件合意価格」という。)で本件株式を譲り受けた。ただし、被告会社は、本件株式の実質価格について公認会計士の意見書により1株当たり356万4162円(以下「本件実質価格」という。)と認識し、同額での買取りをCHAに打診した。このことからすると、被告会社は、本件事業において、経営判断ベースで合意価格を形成していると推認される。そして、その合意価格は、発行会社側との間で売買価格の協議が調わなかった主な顧客に発行会社が提示した価格より高額ではあるが、実質価格より相当程度低額であると推認される。
・本件事業に係る被告会社の業務内容は、譲り受ける譲渡制限株式の発行会社が譲渡を承認しない可能性が高いことを認識しつつ、株主たる地位を直ちには取得できない方法で、主に発行会社側と売買価格で協議が調わない顧客から、経営判断ベースの合意価格で当該株式を譲り受けた上、その約9割で株主たる地位を取得せず、当該株式を発行会社又は指定買取人に対して実質価格ベースで売却し、その差額を自らの事業利益とするとともに自らに投資した個人投資家に分配し、その事業利益の拡大を目指すというものである。
・被告会社が行う本件事業は、弁護士資格のない被告会社が、自らの事業利益のために、譲渡制限株式の株主から、株主たる地位を取得せず、当該株式の実質価格と経営判断価格との差額を事業利益とする目的で当該株式を譲り受け、売買価格決定手続きを利用するなどして、本来当該株主に帰属すべき実質的な企業価値を自らの事業利益とし、当該株式とは無関係の一般投資家に分配するというものである。このような業を放置すると、譲渡制限株式の株主が投下資本を回収する利益を保護するために設けられた売買価格決定手続きの公正かつ円滑な営みは妨げられるというべきであるから、本件事業の業とする行為は、弁護士法72条本文の禁止を潜脱する行為に当たるというべきである。
以上によれば、被告会社が本件事業を業として行った本件売買契約の締結は、国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがないとはいえず、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとは認められないから、本件売買契約は弁護士法73条に違反して無効である。
そうすると、その余の争点について判断するまでもなく、P2はつぼ市の無議決権株式52株を有する株主であり、CHAが被告会社に呈して会社法142条1項に基づく令和2年11月10日付けの通知をしたことにより締結されたとみなされる上記両名の間の売買契約に基づくCHAの被告会社に対する代金債務は存在しない。

敵対的少数株主・株式買取業者に
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